抗リン脂質抗体

抗リン脂質抗体(aPL)とは細胞膜を構成する成分であるリン脂質に対する自己抗体です。この抗体により血管内皮細胞が攻撃を受けると血栓が形成され、支配部位の血流が途絶えることで様々な症状が引き起こされます。
産婦人科領域においては習慣流産、妊娠中毒症、胎児発育遅延の原因として注目され、このような免疫と生殖にまつわる病態を総称してreproductive autoimmune failure syndrome (RAFS)という概念が提唱されています。

抗リン脂質抗体症候群(APS)とは

抗リン脂質抗体症候群とは血中に抗リン脂質抗体(aPL)が存在し、動静脈血栓症、習慣流産、血小板減少をきたす自己免疫疾患です。APSは全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患に随伴することが多いですが、自己免疫疾患を伴わない場合もあり原発性抗リン脂質抗体症候群と呼ばれています。

APSの臨床症状

1.動・静脈血栓症(血栓性静脈炎、深部静脈血栓症、肺塞栓・血栓症、脳梗塞、一過性脳虚血発作、心筋梗塞、末梢動脈閉塞、網膜動脈血栓症による失明、その他)
2.反復性流死産、子宮内発育遅延、妊娠中毒症
3.血小板減少症

APSの診断基準(Wilson WA、1997年)

臨床基準
1.血栓症
・画像診断またはドップラー検査または組織学的に確認されたもの
2.妊娠合併症
・妊娠10週以降の原因不明の子宮内胎児死亡(胎児形態正常)を1回以上
・重症子癇前症、子癇または胎盤機能不全による妊娠34週以前の早産を1回以上経験(新生児形態正常)
・妊娠10週未満の原因不明の流産を3回以上反復

検査基準
1.ループスアンチコアグラント陽性
2.抗カルジオリピンIgG抗体、IgM抗体が陽性
3.抗β2Gp1抗体陽性

APSと習慣流産

不育症における抗リン脂質抗体の検出率は7〜21%、ループスアンチコアグラントの検出率は3〜14%と報告により大きくばらつきがあります。
APSによる流死産は50〜60%が妊娠前期、30%が妊娠中期、10〜20%が妊娠後期に起こると報告されているのに対して、それ以外の原因による流産では約90%が妊娠初期に、約10%が妊娠中期に起こるとされています。つまりAPSによる流死産は妊娠中期〜後期の比較的遅い時期に生じやすいのが特徴です。

抗リン脂質抗体の種類と検出法

梅毒血清反応(STS) ガラス板法
リン脂質依存性凝固時間検査 活性型部分トロンボプラスチン時間(APTT)
抗リン脂質抗体 抗カルジオリピン抗体(抗CL抗体)
抗フォスファチジルセリン抗体(抗PS抗体)
抗フォスファチジルエタノールアミン抗体(抗PE抗体)
抗リン脂質コファクター抗体 抗CLβ2GP1抗体
ループスアンチコアグラント(LAC)

梅毒血清反応(STS)の生物学的偽陽性(BFP)
梅毒検査は妊娠時や外科手術時の感染症検査として一般的に行われている項目です。梅毒血清反応は梅毒に罹患した場合の抗体を検出する検査ですが、それにはリン脂質(カルジオリピン)を抗原としているものと、病原体である梅毒トレポネーマを抗原としている二つがあります。
“生物学的偽陽性”とは梅毒トレポネーマに対する血清反応が陰性であるにも関わらず,脂質抗原に対する抗体が陽性となる現象を言います。つまり梅毒に罹患していないのに陽性と誤って判定される場合(偽陽性)を言います。
この検査がきっかけとなって偶発的に抗リン脂質抗体が検出されることがあります。

リン脂質依存性凝固時間検査
基本的な血液凝固検査である活性型部分トロンボプラスチン時間(APTT)はリン脂質依存性であり、ループスアンチコアグラント(LAC)陽性の場合には時間が延長されます。

上記は間接的ですが、安価に抗リン脂質抗体の有無を検出できる方法として用いられています。

抗リン脂質抗体
リン脂質には陰性荷電のカルジオリピン、フォスファチジルセリン、フォスファチジルグリセロール、ファスファチジルイノシトールや中性荷電のフォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリンなど多数が存在し、その全てに対する抗体を調べることは現実的ではありません。この内、保険適応となっているのは「抗カルジオリピン抗体」です。

抗リン脂質コファクター抗体
抗リン脂質抗体は実際にはリン脂質とそれに結合するプロテインなどのコファクターを介在として反応する抗体であることから、この複合体に対する抗体がより重要とされています。
抗CLβ2GP1抗体はカルジオリピンとβ2グリコプロテイン1(β2GP1)とが結合した複合体に対する抗体であり、ループスアンチコアグラント(LAC)はリン脂質とプロトロンビンとの複合体に対する抗体であります。

APSが疑われる場合にこれらの検査のどの項目を調べるかについては施設により対応が異なります。実際には抗カルジオリピン抗体(抗CLβ2GP I 抗体)とループスアンチコアグラントの両方が陽性になるとは限らないため、双方を同時に行なうのが一般的です。

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