
| 機能性不妊症(原因不明不妊症)とピックアップ障害 |
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| 排卵→受精→着床→妊娠という一連のプロセスの中で最初の関門となる「受精」には、主役である精子と卵子との出会いが必要です。膣内に射精された精子は子宮内を通過して卵管へ進み、卵巣から排卵した卵子は卵管采から卵管内に取り込まれ、「出会い」の場所へと向かいます。しかし、この「出会い」は毎月必ず起こると保証されているものではなく、原因不明不妊症の多くでは、うまく出会えていない事が一因となっています。 この原因となるのは排卵した卵子を卵管内に取り込む仕組みの不具合、すなわち「ピックアップ障害」です。もし両者の出会いが成立しないと、精子は待ちぼうけをくらい、排卵した卵子もどこかで息絶えて受精の機会を逃すことになります。 このピックアップ障害は子宮内膜症やクラミジア感染などによる卵管炎、あるいは卵管周囲癒着のように原因がはっきりとした場合にだけ起こる現象ではありません。あらゆる検査で異常を認めない「機能性不妊症」において、ピックアップ障害はかなりの割合を占めているであろうというのが我々専門医の意見であります。 |
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| 機能性不妊としての二人目不妊 |
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| 当院においても大勢おられる、いわゆる「二人目不妊」の患者さんに共通していることが3点あります。 第一に「一人目は何の苦労もなく授かっているが、その後、数年にわたり妊娠できない」。 第二に「卵管造影検査を含む不妊症の基本検査で何ら異常を認めない」。 第三に「一般不妊治療(人工授精までの治療)を行っても、なかなか妊娠しない」。 出産を経たとは言え、数年の内にご夫婦の生殖能力に大きな異常が突然生じる可能性はかなり低いと考えられます。一人目を出産できたと言うことは、おおむね異常がないことが実証された訳であり、現にほとんどのご夫婦では二人目以降も順調に妊娠できるのです。 こうした「どうしても納得のいかない不妊症」の原因は、生殖機構の「偶然のトラブル」としてとらえた方が自然であり、その原因としては「ピックアップ障害」が最有力と考えられるのです。 |
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| ピックアップ障害の治療法 |
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| ではこのピックアップ障害に対してはどのような治療法があるのでしょうか? 卵子が卵管采に取り込まれる様子は、運動会の「玉入れ競争」に喩えられます。玉をカゴに向かって放っても簡単には入りませんが、まとめて二つ三つ放れば運良く入ることがあります。つまり排卵誘発剤を使用して複数の排卵を起こせば、受精の確率は上昇することが期待できるのです。 しかしこの冊子を読んでいる方は、すでに排卵誘発法も人工授精も試されており、新しい提案ではないためガッカリされるでしょう。すでにお気づきのようにピックアップ障害に対する根本的な治療法は残念ながら存在しないのです。卵子と精子とが確実に出会える方法、それは最終的には体外受精という選択肢にたどり着くしかないのです。 一人目を自然に授かり、まさか不妊治療を受けることなど夢にも思っていなかったご夫婦にとって、排卵誘発剤や人工授精ましてや体外受精などは到底受け入れられない現実でしょう。我々にしても機能性不妊症だからと、いきなり最初から「体外受精」を勧めることには抵抗を感じます。しかし、このようなケースに対して型のごとくステップアップ治療を行っても、結果は芳しくないのです。それにも関わらずこれらの治療が漫然と行われている背景には、医療側の遠慮と患者側にはステップアップすることへの抵抗感があるため思われます。 |
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| 体外受精 |
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| 体外受精ム胚移植法(IVF-ET)は既存の治療法の中で最も高い妊娠率が期待できる方法です。 これは卵胞から卵子を一旦体外に取り出して精子と受精させた後、培養して育てた受精卵を子宮内に注入して着床させる方法です。この方法では卵管を必要としないため、ピックアップや輸送などの卵管の機能が損なわれている場合でも妊娠が可能です。また精子の濃度を調整することで、一部の男性不妊にも対応できます。一回の胚移植当たりの妊娠率は35〜40%と高く、ステップアップ治療の最終手段に位置づけられています。 体外受精の技術は日進月歩であり、妊娠率は施設により大きな差があります。高度にトレーニングされた胚培養士と高性能の培養器機、そして高品質の培養液は不妊クリニックの三種の神器と言って良いでしょう。しかしその維持と投資には莫大な費用がかかるため、体外受精の実施費用は30〜40万円と高額になるのが現状です。2004年度よりは助成金制度による一部負担が始まりましたが、それでも一ヶ月の月収にも相当する費用は家計にとって大きな負担となります。 |
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| DOST法 |
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| 2002年秋、加藤レディースクリニック(日本最大)により「OUT(アウト)法」という新しい治療法が考案され、10%以上の妊娠率が得られたとの報告が新聞でも取り上げられました。 このOUT法とは、前もって性交渉を行った翌日、採卵(経膣的穿刺により卵子を体外に取り出すこと)により得られた卵子をそのまま子宮内に移植するという方法です。卵子は精子と子宮内で出会い受精した後、うまくゆけば着床します。人工授精と体外受精の中間的なOUT法は今後の臨床成績によっては新しい治療法として普及してゆく可能性がある画期的な発表でしたが、現在は下火になっているようです。 一方、DOST(ドスト)法はOUT法のように性交渉は行わずに採卵を行い、得られた卵子を採取した精子と一定時間、体外で混ぜ合わせた後に子宮内に移植するという方法です。精子と卵子の「出会い」は確実であるというのがOUT法との大きな違いです。 |
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| 体外受精とDOST法の違い |
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| 「体外受精とDOST法の違いがわかりにくい」との質問を多く受けます。体外受精は「卵子を取り出して精子との受精を確認し、受精卵を培養して子宮内に移植する方法」です。 つまり「採卵→媒精→受精確認→培養→胚移植」という過程を数日間で行います。 一方、DOST法は「卵子を取り出し精子と混ぜてすぐに子宮内に移植する方法」です。 つまり「採卵→媒精→卵子と精子の移植」の操作を一日で終える方法です。 この聞き慣れないDOST法は培養技術が未熟であった体外受精創世記に試された一手法であり、体外培養の進歩により安定した妊娠率が得られるにつれて、忘れ去られて行きました。しかし手法は違いますがGIFT法(精子と卵子を合わせて「卵管」に移植する方法)などは現在でも有用な方法として一部の施設では積極的に行われており、一定の成績をあげていることを考えると、DOST法の有用性は十分あると考えます。 |
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| DOST法の特徴 |
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| ピックアップ障害に対応できる(卵子と精子との出会いは確実)。 卵胞を穿刺することで実際に卵子の存在を確認できる。 採卵に際しては、体外受精のような過度の排卵誘発を行う必要がない。 体外受精に比べて簡易であり、人の手が加わるのを最小限にできる。 体外受精に比べて簡素であり、コストを抑えることができる。 |
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| DOST法の対象となる人 |
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| 1.続発性不妊症 出産歴や妊娠歴(流産)のある方。 2.原因不明不妊症(機能性不妊症)の方。 3.人工授精は不成功に終わったが、体外受精までは考えていない方。 4.人工授精から体外受精への中間的ステップとして。 5.卵子の状態を調べるための検査として。 6.体外受精からのステップダウン治療として。 |
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| DOST法の妊娠率 |
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| DOST法の問題点は大規模な臨床成績の集積がなされておらず、そのため妊娠率や安全性に関するデータが提示できないという点です。その理由はDOST法に取り組んでいるのが全国でもおそらく当院だけであるからです。 私がDOST法を始めたのは大学時代、体外受精を何回トライしても妊娠できなかった方に最後の手段として行ったところ、成功したという貴重な経験からです。ASKAではこの2年間で10名の妊娠例があります。これを一回当たりの妊娠率にするとおよそ8.9%となり、この治療を受けた人の12.3%が妊娠したことになります(HP「生殖補助医療の成績」参照)。これらの方々は皆、人工授精を繰り返しても妊娠に至らなかった人達であります。 体外受精の妊娠率が35〜40%、人工授精が10%前後であることを考えると、今後の実績を積むことで15%前後の成績が出れば、DOST法も一つの選択肢として広く認知されるかもしれません。 治療周期あたりの妊娠率が体外受精とDOST法とで大きな差が生じますが、これは次のような理由によります。 1.卵子は精子と媒精しても必ずしも受精する訳ではない(未熟卵や受精障害のため)。 2.受精卵は必ずしも良好胚に育つ訳ではない(卵子の質)。 受精するかどうかさえ分からない卵子を移植するDOST法と、受精させて育てた良好胚を移植する体外受精とでは妊娠率に差があるのは当然の事であります。こう言い切ってしまうとDOST法の立場がなくなりますが、しかし人工授精に至っては、「精子を子宮内に注入するだけの方法」であり、卵子と精子が出会わないことも多いとされます。 |
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| DOST法の実際 |
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| 以下にDOST法の実際的な流れについてご説明します。詳細についてはHPの「生殖補助医療」もご参照ください。 |
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| 1.排卵誘発 |
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| 採卵はクロミッド周期もしくは自然周期で行い、補助的にhMG製剤を使用することがあります。DOST法では受精の有無の確認を行わずに子宮内に移植するので、未熟卵や未受精卵などの卵子のロスを想定して、あらかじめ複数個の移植を行います。しかし一方で多胎妊娠のリスクもあるので、移植数は相談のうえ「1〜3個」としています。 |
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| 2.採卵日の決定 |
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| タイミング法と同様に超音波検査にて卵胞径を計測し、成熟兆候がみられた段階でGnRH製剤(もしくはhCG製剤)を投与して卵子を成熟させ、約36時間後(翌々日)に採卵を行います。 |
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| 3.採卵当日 |
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| 当日は指定された時間に来院してください。排尿を済ませた後、手術室にて採卵します。 麻酔希望される方は、朝食を摂らずにお越し下さい。
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| 4.媒精(精子と卵子を混ぜ合わせること) |
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| 精子はASKAで採精するか、もしくは自宅で採精したものを持参してください。 精子は洗浄選別を行った後、移植までの数時間、卵子と混ぜ合わせます。 |
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| 5.卵子と精子の移植 |
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| 昼(あるいは夕刻)に、媒精していた卵子と精子を子宮内に移植します。移植は人工授精と同様で短時間で終わります。移植後は終了後、20分間の安静をとります。 |
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| 6.移植後 |
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| 採卵した日は無理をしない程度なら、事務仕事や家事ができます。 移植後2週間後に妊娠判定となります。 |
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| 7.その他の注意 |
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| 採卵当日までに排卵している可能性が10〜20%あります。この場合、排卵直後であれば人工授精に切り替えることができます。 一回で妊娠する可能性は低いと思われます。何度かトライしてみましょう。 |
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| DOST法に伴うリスク |
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| DOST法には体外受精に準じた以下のリスクがあります。 詳細についてはHPの「生殖補助医療」「合併症・副作用」を参照してください。 □ 卵巣過刺激症候群(OHSS) □ 多胎妊娠 □ 子宮外妊娠 □ 採卵にまつわる出血、感染、臓器損傷 |
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| 実施費用 |
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| DOST法の実施費用は31500円です。 黄体ホルモンやhCG製剤などの薬剤費は別途必要です。 DOST法を行う周期では、体外受精と同様に採卵前(採卵後)の診察料および投薬料の全てに保険が利きません。保険診療では自己負担率が3割であるため、およそ3倍の負担となります。試算では、一回のDOST法を行うとおよそ60000円が必要です(診察回数、使用薬剤により異なります)。 |
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