医療法人平治会 ASKAレディースクリニック

治療のながれ
体外受精(顕微授精)を実際の治療の流れにそって説明します。
排卵誘発、検卵、hCGへの切り替え
採卵
採精
媒精(顕微授精)
受精卵培養
胚移植
黄体補充
妊娠判定
以下に解説します。

排卵誘発
自然の排卵周期では成長する卵胞は通常1個ですが、ARTでは一度に多数の卵子を得て妊娠率の向上をはかるためにクロミッド(内服剤)やhMG製剤あるいはFSH製剤(注射剤)などの排卵誘発剤を用います。
採卵できる卵子数は使用する排卵誘発剤の投与量のほか年齢や体質、薬剤の感受性、過去の治療歴などにより異なりますが、クロミッド周期では1〜3個、hMG(FSH)周期では3〜15個が目安です。
排卵誘発剤の投与と平行して超音波検査による卵胞計測(検卵)を適宜行い、卵胞発育を確認し採卵時期を予測します。卵胞成熟が見られた時点(通常、卵胞径が18〜20 mm程度)で排卵誘発剤の投与を終了し、続いて卵胞の成熟を促すhCG製剤を注射して翌々日の採卵に備えます(これを「hCGへの切り替え」と言います)。

採卵日は自然周期の排卵時期より幾分早くなります。
排卵誘発剤により卵巣過刺激症候群が起こる可能性があります(後述)。
遠方よりお越しの方は近医に依頼して注射を受けることができます。
注射部位に硬結や発赤などのアレルギー反応を生じる。

採卵(経膣的卵胞穿刺)
採卵は経腟超音波法によって卵巣の位置を確認し、細い穿刺針を膣壁から腹腔内に貫通させ、卵巣にある卵胞を穿刺して行います。
膣壁と腹腔を隔てている壁は薄く、針先を膣から数センチほど進めるだけで容易に卵巣に到達できます。

採卵の所要時間は卵胞数によって異なります。卵胞が5個なら3分、10個なら5分くらいが目安です。
採卵の痛みには個人差がありますが、おおむね自制内です。
しかし卵胞数が多い場合には採卵に時間を要しますので、卵胞数が5個以上の場合には、麻酔をお勧めします。
採取された卵胞液には卵子が1個存在しており、顕微鏡で観察しながらこれを回収します。

採卵前の診察の時点で例えば10個の卵胞が確認されても、必ずしも10個の卵子が回収できる訳ではありません。卵子が未熟な「未成熟卵」や卵胞中に卵子が存在しない「空胞」、卵子の不良品である「形成不全卵」、「変性卵」などがあり、これらは治療に使用することができません。こうした異常卵子は、年齢が進むにつれて増加します。

□採卵の手順
1.
病室(個室)でガウンに着替え、麻酔用の点滴をします。
採卵直前に排尿を済ませておいてください。
2.
採卵室で膣の洗浄を行った後、静脈麻酔をして採卵を始めます。
3.
終了後は病室で数時間の安静をとり、午後1〜2時頃の帰宅となります。

□採卵後の注意事項
病室は個室で、ベッドの他にテレビ、ソファがありますので、ご主人様と一緒にお過ごしいただけます(設備のない部屋もあります)。
採卵当日は夕刻〜夜半にかけてお腹の痛みを感じることがあります。
希望の方には鎮痛剤を用意しております。当日は自宅にて安静を心がけ、外出は控えてください。家事は問題ありませんが、入浴はシャワーのみとしてください。翌日以降はふだん通りで結構です。
採卵後一週間頃から卵巣過刺激症候群による腹満感と月経痛様の腹痛がみられますので、無理をしないでください。スポーツや発汗を伴うサウナや長時間の入浴は避けてください。

□麻酔を受ける方へ
当日は朝食を摂らずにお越し下さい。起床時の飲水はコップ一杯程度の水にとどめてください(牛乳やジュース、コーヒーは飲まないでください)。なお前日の夕食はふだん通りで結構です。
麻酔法は静脈麻酔です(軽い全身麻酔であり、局所麻酔ではありません)。
数十分間は意識や記憶がとぎれます。麻酔の影響で気分が悪くなることがあります。また覚醒後も麻酔が残ることがありますので、お帰りの際はご自身で車の運転をしないで下さい。
麻酔料(3,150円)が別途必要となります。

採精
採卵終了後、10〜12時頃にご主人様には「採精室」にて精液を採取していただきます。精液は採取後、精子分離剤を用いて遠心分離、洗浄濃縮を行い運動性の良好な精子を選別します(パーコール法)。
体外受精では卵子1個に対して数万〜数十万匹/mlという精子濃度が必要なため、精子が1匹でも存在すれば、受精できるという訳ではありません。そのため良好精子の回収が十分でなく規定濃度に達しない場合には、顕微授精に変更する場合があります。
顕微授精の場合には、卵子1個に対して精子1匹あれば可能です。重症乏精子症、精子無力症などの極めて精子の少ない人でも可能ですが、なるべく運動性が良く形態異常のない良好精子を選んで実施します。

□採精方法
採精に先立っては、採卵日の3〜7日前に一度射精しておくのが理想的です。
それが無理な場合でも、禁欲期間ができるだけ2週間以上にならないようにしてください。また、ご主人が出張などで不在となる場合には、事前に凍結保存した精子を使用することも可能です。ただし凍結精子を使用する場合は、融解時の精子の生存状態によっては顕微授精となる可能性があります。

□採取方法
1.
院内にある精液採取のための部屋(採精室)にご案内します。
2.
精液はマスターベーションによって採取してください。
3.
採取する前には手を洗って、専用容器に精液を直接射出してください。
容器のフタをしっかり閉めて名前を書いたラベルを容器の側面に貼った後、パスボックスに入れてください。
採精は採卵の後の10〜12時頃になります。お仕事などで、お急ぎの場合には、9時から採精することも可能ですので、スタッフにご相談ください。

□自宅で採取する場合の注意事項
当日やむを得ず来院できない場合には自宅での採取も可能ですが、以下の点にご留意ください。
1.
滑剤により精子が悪影響を受けますので、コンドームを使用して採取しないでください。
2.
採取後の精液は、常温(18〜22度)で保管してください。
極端に暑い所や、寒い所には放置しないでください(冷蔵庫で冷やしたり、カイロで暖めたりもしないでください)。寒い日はタオルなどにくるんで持参してください。
3.
採取後の精液は、3時間以内に持参してください。
早いほど良い状態で使用できます。

媒精・培養
体外受精では、精子と卵子をシャーレの中で混和し自然に受精させます(媒精)。受精には一定基準の精子濃度が必要です。
顕微授精では、選別された一匹の精子をマイクロピペットで卵子の中に注入して授精させます(顕微授精)。この場合、精子が極めて少数でも可能です。
受精が成立すると約18〜24時間で前核期胚、48時間で4〜8分割胚(初期胚)、5日で胚盤胞となります。
採卵の翌日には電話にて受精の有無を確認できます。
体外受精や顕微授精を行っても、成熟卵の全てが受精する訳ではありません。
受精しない場合や、受精しても受精卵のグレードが悪い場合には「胚移植キャンセル」となることがあります。
採卵の翌日の指定された時間に「受精確認」の電話をおかけください。

受精率の目安
体外受精
6〜7割
顕微授精
7〜8割

胚移植
受精後、卵割が順調にすすみ良好胚ができれば胚移植を行います。
胚移植には採卵後2日目、3日目の「初期胚移植」と5日目の「胚盤胞移植」があります。どの方法を選択するかは医師とご相談ください。

1.
移植時間は13〜14時です。指定された時間に来院してください。
2.
子宮前屈の人では膀胱に尿が溜まっている方が若干、移植しやすくなりますので、移植2時間前から尿だめしてください。
なお後屈の方は、尿だめは不要です(医師にご確認ください)。
3.
来院後、移植後の子宮の収縮を抑える薬を服用します。
4.
処置室にて子宮内に胚移植を行い(所要時間10分)、その後20分間ベッドで安静をとります。また採血と注射を行います。
5.
採血と注射を行います。

胚移植の日程は採卵当日にお知らせいたします。
胚移植時には麻酔を行いません(人工授精と同様で、強い痛みはありません)。
移植当日は激しい運動や性交渉は避けてください。
自転車やバイクに乗る場合は、強い振動が加わらないようにした方が無難です。
翌日以降はふだん通りの生活で結構です。

□胚移植の実際
受精卵の移植方法には様々な方法があります。これらは受精卵の数やグレード、年齢などにより個々に検討されます。

 移植胚の選択
初回
初期胚移植(希望に応じて胚盤胞移植)
2回目〜
胚盤胞移植・二段階胚移植
卵管性不妊(外妊既往)
胚盤胞移植
受精卵が胚盤胞に到達しない可能性を考慮して、当院では初回は無理をせずに初期胚移植を行いますが、希望に応じて胚盤胞移植も選択できます。

 移植数
(日本産婦人科学会の会告2008年)
35歳未満の人
1回目  原則1個
2回目  原則1個
3回目〜 2個まで
35歳以上の人
1回目  2個まで
胚盤胞移植
1個
妊娠率の高い35歳未満は多胎妊娠を防ぐために、移植数が「原則1個」に制限されました。また妊娠率が高い胚盤胞の移植数は1個とします。

 孵化補助法
35歳未満の人
初回  実施せず
2回目〜 実施
35歳以上の人
実施
凍結受精卵
実施
FSH高値
実施
透明帯肥厚
実施

黄体刺激(補充)療法
胚移植後には妊娠に必要な黄体ホルモンを十分なレベルに維持するために黄体刺激(補充)療法を行います。
hCG製剤は排卵後の黄体を刺激して黄体ホルモンの分泌を促します(黄体刺激療法)。
また黄体ホルモン製剤(内服、注射)は、黄体ホルモンそのものを補充するものです(黄体補充療法)。とりわけGnRH製剤を用いた採卵周期では、黄体機能不全が起こるため、これらのサポートは重要です。具体的には採卵後より内服剤の服用を開始し、胚移植後には注射剤(または膣坐薬)の投与も併用します。黄体刺激(補充)療法は妊娠判定日まで行い、妊娠反応が陽性となった場合には、およそ妊娠8週まで続けます。

黄体ホルモンの注射剤は油性のため注射部位が赤く腫れて痛んだり、注射の跡が硬くなることがあります。注射後はしっかりと揉みほぐしてください。
黄体ホルモン剤により、湿疹が出ることがあります。また内服剤では「むかつき」「胃もたれ」「むくみ」などが起こることがあります。
hCG製剤の注射により、腹部膨満や腹痛をなどの症状が出ることがあります(OHSS:後述)。

妊娠判定
ARTでは採卵日を「妊娠2週0日」として妊娠週数を数えます。
胚移植後2週間の時点(妊娠4週代)に精密尿検査で妊娠判定を行います。受精卵が順調に着床していれば、この時点で妊娠反応が陽性となりますが、陰性の場合は残念ながら不成功です。
ただし判定前から月経様の出血や腹痛があっても正常に妊娠していることがありますので、自己判断せずに判定日には必ず受診して下さい。

妊娠4週目:
妊娠反応が「陽性」となります。
妊娠5週目:
赤ちゃんの部屋(胎嚢)が子宮内に見られます。
妊娠6週目:
赤ちゃんの付属物(卵黄嚢)が確認されます。
妊娠7週目:
赤ちゃんの心拍が胎嚢内に見られます。

ARTによる妊娠ではおよそ20%が流産に終わります。
妊娠反応が陽性となっても胎嚢が見えてこない場合があり、これを「化学的妊娠(化学的流産)」と言います(後述)。一般に胎児心拍が確認されればそれ以降の流産の確率は10%以下に下がります。
不成功に終わり、続けての治療を希望される場合でも1カ月間の休憩が必要です(原則として2周期続けての採卵は行いません)。
黄体ホルモンを服用するため、妊娠していない場合でも、判定日を過ぎても基礎体温はすぐには下がらず、月経が遅れることがあります。
融解胚移植をホルモン補充周期で行う場合には、妊娠判定陽性後にも黄体ホルモンの服用を続けなければ、必ず流産しますのでご注意下さい。


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