医療法人平治会 ASKAレディースクリニック


流産の原因
1受精卵の染色体異常:多くは偶発的、母体の加齢、ご夫婦の染色体異常
2内分泌異常:黄体機能不全、高プロラクチン血症
3免疫学的異常:抗リン脂質抗体症候群、HLA相同性
4子宮異常:弓状子宮、双角子宮、子宮筋腫
5感染症:クラミジア、ウイルス疾患
6内科的合併症:甲状腺機能亢進症(バセドウ)・低下症、糖尿病、膠原病
        血液凝固系異常
7その他

 個々の原因につき、以下に解説します。
 1.染色体異常
胎児(絨毛)の染色体異常は流産の60〜70%に見られ、流産の最大の原因です。そしてこの割合は母体の加齢と共に上昇してゆきます。受精卵の段階で40%に染色体異常があるとされ、それが出生時には0.6%に減少することを考えると、この「自然淘汰」が働かなければ4割の出生児が染色体異常を持って生まれることになります。その意味で流産は止めることもできないし、また止める必要もないとの考えるのです。このように言い切ってしまうと、この領域の治療は全く意味がないのかということになってしまうのですが、多くの流産は母体に原因があるのではなく、受精卵の問題であるという認識をまず持っていただきたいと思います。しかもこの異常は偶発的で、誰にでも起こりうる現象であるのです。

ご夫婦の染色体異常に起因する流産
受精卵の染色体異常は母体の加齢に伴い頻度が上昇しますが、これは配偶子(卵子)が作られる過程で染色体の不分離が起こりやすくなることが原因です。高齢出産ではダウン症が増えるとされるのはこのためです。
一方、年齢とは別に配偶子の異常がご夫婦のどちらかが先天的に持っていた染色体異常に起因しているケースがあります。これは染色体の構造的異常によるものであり、遺伝情報には欠損がないため、本人には何の症状もありません。染色体検査を行って初めて分かるもので、このような人を「保因者」と言います。

染色体検査
流産の際、摘出された絨毛を用いて胎児の染色体検査を行う場合があります。最近では体外受精などで得られた受精卵の割球を用いた染色体検査が技術的に可能になりました。これはあらかじめ異常の有無を確認して受精卵を選択した上で胚移植を行う方法で、「着床前診断」と呼ばれます(実施に際しては学会による承認審査が必要です)。また妊娠初期の絨毛穿刺や羊水検査なども従来から行われている検査で、それぞれ特徴があります。

流産は大きく二つに分けて考える必要があります。
1受精卵(胎児)の異常がある流産
2受精卵(胎児)に異常がない流産
いわゆる流産の治療対象となるのは2の場合に限ります。とは言っても、これらは結果論的な分類であって、実際の妊娠において染色体の異常の有無については特別な手法を取る場合を除いて知り得ることはできませんし、個々の流産においてさえ原因を調べるために染色体検査を行うことは一般的ではありません。

参考 ダウン症の染色体異常
 ダウン症の染色体異常には以下の3タイプがあります。
 1トリソミー型 95%
 2転座型 3〜4%
 3モザイク型1〜2%

1「トリソミー」とは染色体が「3本ある」という意味で、ダウン症の場合には21番の常染色体が3本あります。この異常は配偶子が形成される減数分裂の際の不分離が原因で、この余分な21番染色体は80%が母親由来で残りが父親由来です。
この不分離は偶発的な現象であり、誰にでも起こりえます。高齢妊娠ではダウン症が多いとされるのは母体の年齢が上昇することで、不分離の頻度が増えるからです。

2「転座」とは染色体の数には問題がなく、染色体が一部で入れ替わっている状態をいいます。転座には染色体に過不足がなく表現型に異常がない(つまり生きる上では支障がない)「均衡型」と、異常があり流死産するか、重い障害を抱える「不均衡型」があります。
子に「均衡型転座」が見られる場合には、親にも同様の「均衡型転座」があり、それが伝わった場合と自然に発生した場合があります。同様に、子の「不均衡型転座」には親に「均衡型転座」がありそれが不均衡に伝わった場合と自然に発生した場合があります。
不均衡転座型ダウン症は約50%が親の均衡型転座が不均衡に伝わったのが原因とされます。この場合の再発率は母親に均衡型転座が見られる場合で10%、父親に均衡型転座が見られる場合で5%の確率であることされます。

3「モザイク型」とはトリソミーの細胞と正常な細胞が混在している場合で、これは配偶子形成の際ではなく、受精後の体細胞分裂の際の不分離が原因です。
理論的流産率は相互転座で50%、ロバートソン転座で67%と高率ですが、最終的には前者では56.0%、後者では76.5%の率で生児を獲得したとの国内の報告があるので、このような場合でも妊娠をあきらめる必要はないと思われます。
習慣流産の夫婦に対する染色体検査を行った調査では、均衡型転座が1.5〜3%の頻度で見つかります(一般集団では、0.1%)。相互転座が最も多く、継いでロバートソン転座の順です。
高齢妊娠などの理由で胎児の染色体検査を行い「トリソミー型」ではなく「転座型」の異常が見つかった場合には、親に染色体異常がある可能性が高いため、引き続いて両親の染色体検査を行うことになります。ご夫婦が染色体異常の保因者であることが判明した場合には、妊娠に際して出生前診断を受けた方が良いかと思います。
転座保因者であるという理由では、学会は着床前診断(受精卵の染色体検査)を認めなかったという前例があるので、この場合の検査は羊水検査を行うことになるでしょう。

 2.内分泌異常
黄体機能不全
不妊症の原因となる黄体機能不全が流産の原因としてどれほどの割合を占めるかについての、明確な結論はありません。流産した結果、黄体ホルモンが低下しているのか、黄体ホルモンの低下により流産しているのかについては調べるすべはありません。

高プロラクチン血症
高プロラクチン血症は習慣流産の患者の15%に見られるとの報告がありますが、プロラクチンの値が高いからと言って、流産率が高くなる訳ではないとされます。高プロラクチン血症では黄体機能不全を合併することがあり、これが誘因となるとの考えもあります。

 3.免疫学的異常:抗リン脂質抗体症候群、HLA相同性
抗リン脂質抗体症候群(「不妊の基礎知識」参照)
抗リン脂質抗体症候群とは反復流産、血栓症、血小板減少などを併せ持つ疾患です。血液中の抗体の測定により診断されます。胎盤などの微小な血管に血栓が形成される結果、流産につながるとされます。

HLA相同性
父親の情報も受け継ぐ胎児は母体にとっては異物となり得ます。体内に侵入した細菌を排除するのと同様な免疫機構が働くのであれば、胎児は排除(流産)されてもおかしくはないはずです。妊娠により胎児を守る抗体(遮断抗体)が産生されることで免疫的に守られ、妊娠が維持されていると現在では考えられています。
父親と母親が免疫学的に類似している場合には、免疫機構が胎児を認識できないため、遮断抗体の産生が不十分となり流産してしまうという仮説が立てられました。これに基づき父親の白血球(リンパ球)を母親に接種して免疫を高めるというのが「免疫療法(リンパ球輸血)」の論理的根拠とされていますが、夫婦のHLA相同性と流産の関連性については現在では否定的です。

 4.子宮異常:弓状子宮、双角子宮、子宮筋腫
子宮奇形があれば必ず流産するわけではありませんが、流早産を起こしやすいため妊娠期間を通じて注意が必要です。習慣流産の原因と考えられる場合には、手術による矯正を行うこともあります。

子宮筋腫については流産の原因である以上に、不妊症の原因として重要です。妊娠にほとんど影響しない筋腫も多いため、筋腫核出術などの治療を先行させるかどうかは個々に検討することになります。

 5.感染症:クラミジア、ウイルス疾患
感染症の存在があれば必ず流産するわけではありませんが、流早産につながることがあるため、妊娠期間を通じて注意が必要です。

 6.内科的合併症:甲状腺機能亢進症(バセドウ)・低下症、糖尿病、膠原病
           血液凝固系異常
これらの合併症が、不育症のスクリーニングによって発見される頻度は高いものではありません。内科的に十分にコントロールされた状態であれば、大きな問題となることはないと思われます。

関連サイト
ハートビートくらぶ
不育症(習慣流産)及び反復流産を抱え努力を続けている患者さまを中心にしたNPO法人です。

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