治療の流れ

排卵誘発と検卵

自然の排卵周期では成長する卵胞は通常1個ですが、高度生殖補助医療では一度に多数の卵子を得て妊娠率の向上をはかるために、排卵誘発剤を使用します。
排卵誘発法には、クロミフェン(クロミッド)、アロマターゼ阻害剤(レトロゾール)を用いた自然に近い“低刺激法”と、hMG(FSH)製剤を用いた“刺激法”とがあります。
実際に採卵できる卵子数は、使用する排卵誘発剤の投与量のほか、年齢や体質、薬剤の感受性、過去の治療歴などにより異なりますが、低刺激周期では1〜3個、刺激周期では3〜15個が目安です。

低刺激法

作用の弱いクロミッドやレトロゾールを用いて排卵誘発を行う方法。
採卵できる卵胞数は1〜3個となります。身体への負担が少なく、副作用も軽微です。毎月採卵を行うことも可能です(遺残卵胞がなければ)。

対象
・卵巣機能が低下していて注射が効きにくい方(40歳以上の方、血中FSH値が高値の方、血中AMH値が低値の方)
・注射が効きやすく副作用が出やすい方

長所
・内服剤なので注射に比べて服薬が楽である。
・副作用(卵巣過刺激症候群)が少ない。

短所
・クロミッド服用時には子宮内膜が薄くなるため、内膜の厚みが 移植の基準に満たない場合には、新鮮胚移植はキャンセルされます。この場合、受精卵は一旦、凍結保存となり次周期以降に融解胚移植を行うことになります。
・採卵数が少ないため、良好胚ができない場合があります。
・採卵を繰り返すため治療費の負担が大きくなる可能性があります。
・採卵時期の調整が難しく、また採卵時に排卵してしまっている可能性があります。

刺激法

比較的作用の強い注射剤を用いて排卵誘発を行う方法。
採卵できる卵子の数は3〜15個となります。卵胞数が多い場合、身体への負担は多く副作用も強く出ます。卵巣の負担も大きいため、採卵を毎月行うことはできません。

対象
・卵巣機能に問題のない方

長所
・一回の採卵で多数の卵子を得ることができるため、良好胚が育つ確率が高まります。
・移植後に余った受精卵(余剰胚)は凍結保存することができます。
・移植が不成功だった場合には、続けて余剰胚の移植ができます。
・妊娠できた場合には、余剰胚は二人目の治療に用います。

短所
・採卵数が多いため副作用回避のため、新鮮胚移植は見送りとなります。この場合、受精卵は一旦、凍結保存され次周期以降に融解胚移植を行います。
・副作用(卵巣過刺激症候群)が強い場合があります。

全く排卵誘発剤を用いない“自然周期法”では、採卵のタイミングが難しく、採卵数も1個となるためメリットはありません。

排卵誘発剤について

クロミフェン(内服剤)
商品名:クロミッド セロフェン
下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)は、卵巣に働きかけて卵胞を育て、排卵させる作用を持ちます。
クロミッドは、下垂体からFSHとLHの分泌を促すことで排卵作用を発揮する内服剤であり、一般不妊治療でも広く使用されています。
排卵作用は、それほど強くないため、hMG製剤のように多数の卵胞は発育しませんが、卵巣機能が低下している40歳以上の方やhMG製剤が効かない低反応群の方においても効果が期待されます。
副作用として、服用時の卵巣の痛みやお腹の張り、頭痛、便秘、悪心、霧視などがありますが、発育卵胞数が少ないため卵巣過刺激症候群(後述)は軽微です。子宮内膜が薄くなる副作用があるため、内膜厚が移植に基準に満たない場合には、受精卵を凍結保存して新鮮胚移植を見合わせることがあります。

アロマターゼ阻害剤(内服剤)
商品名:レトロゾール フェマーラ
男性ホルモンから女性ホルモンへの変換を抑制する作用によりエストロゲンの産生を抑えることで下垂体よりFSHの分泌を促し、排卵作用を示す薬剤です。クロミフェンより副作用が少ない特徴があります。また卵巣過刺激症候群を予防する作用があります。

hMG製剤とFSH製剤(注射剤)
閉経期の女性では、卵巣機能の低下にともない下垂体からのFSHとLHの分泌が上昇します。これらのホルモンは尿中に多く排泄されるため、この尿を回収してFSHとLH成分を抽出精製した製剤が“hMG(ヒト閉経期ゴナドトロピン)製剤”です。hMG製剤には、含有するFSHとLH成分の比率により、いくつかの種類があります。hMG製剤はこれらのうちLH成分を比較的多く含むものの総称で、これに対してLH成分を含まないものを「FSH製剤」と呼んで区別しています。

一方、海外では10年ほど前から人の尿を原料とせず、遺伝子組換えによって製造された“リコンビナントFSH製剤”が主流となっています。尿を原料としないため不純物を含まず品質が安定しているのが特徴で、従来の薬剤に比べて卵子の質や妊娠率が向上したとの報告もなされています。これを受けて日本でも2005年に「フォリスチム」が製造認可されました。

刺激周期でのhMG(FSH)製剤の使用法は、月経開始後3日目から注射を開始し、1日300〜75単位を7〜10日間連日投与します。卵胞の発育を見ながら採卵の前まで投与を続けます。
hMG製剤とFSH製剤にはそれぞれの特徴があります。これらの薬剤は、一概にどれが良いとは言えませんが、治療を受ける人の体質や年齢に適した製剤が選ばれます。同じ成分でもメーカーにより大きな価格差がありますが、価格が高いから効果があるというものではありません。
副作用としては、投与時の卵巣の痛みやお腹の張り、頭痛、倦怠感、火照り、むくみ、注射部位の硬結や発赤などのアレルギー反応などがあります。
また卵巣過刺激症候群(後述)についても注意が必要です。
なおhMG製剤とFSH製剤(フォリスチムを除く)は、人の尿を原料とした生物製剤ですが、これらによる感染症などの健康被害についての報告はありません。

自己注射について
当院では医療関係者以外の方でも原則的に自己注射していただいております。そのことにより毎日の通院から開放されます。治療開始前に注射の練習が必要となりますので、看護師にご相談下さい(注射オリエンテーション:要予約 有料)。

リコンビナントFSH製剤(フォリスチム)には、簡単に使える自己注射キットがあります。それ以外のhMG/FSH製剤には自己注射キットがなく、またフォリスチムの注射キットで他の製剤を注射することもできません。
注射は卵胞の発育を見ながら、途中で種類を変えてゆくことも多いので、最後までキットを使用できるとは限りません。

他院での注射について
遠方のため連日の注射の通院が負担となる方は、近医に注射を依頼することもできます。治療が始まる前に、近くの産婦人科(もしくは内科)で当院からの注射依頼が可能かどうかについてご相談下さい。許可が得られた場合には、治療開始時に注射予定を記した依頼状をお渡しします。

卵胞の成熟のための“切り替え”
排卵誘発剤の投与と平行して超音波検査による卵胞計測(検卵)を行い、採卵時期が決定されます。卵胞が成熟した時点(通常、卵胞径が18〜22mm程度)で排卵誘発剤の投与を終了し、続いて卵胞の成熟を促すhCG製剤を注射して、翌々日の採卵に備えます(これを“hCGへの切り替え”と言います)。
クロミッドを用いた周期の場合、hCGの切り替えの代わりに、GnRHアゴニスト製剤(後述)を用います。

hCG製剤(注射剤)
下垂体から分泌される黄体化ホルモン(LH)は、卵胞を成熟排卵させ黄体を刺激して黄体ホルモンの分泌を促します。
不妊治療においては適切な時期に排卵を促すため、LH作用を持つ薬剤が必要となりますが、現在のところLH製剤は製品化されておらず、その代わりとしてhCG製剤(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が使用されています。
hCGは妊卵や絨毛(胎盤)から分泌されるホルモンで、黄体刺激作用により黄体ホルモンの分泌を促し妊娠を維持する働きがあります。
胎盤からこのhCGを抽出精製したのがhCG製剤で、不妊治療や切迫流産に対して使用されています。

刺激周期において排卵誘発にGnRH製剤を併用した場合、下垂体よりFSHとLHの分泌が抑制されるため、採卵前に卵胞を成熟させるためにhCG製剤が必要となります。通常、卵胞の成熟が確認された時点でhCG 5000〜10000単位を投与し(これを“hCGへの切り替え”と言います)、35〜37時間後に採卵を行います。
採卵は、朝8〜10時の間となるため、hCGへの切り替えは、逆算して前々日の夜20〜22時となります。hCGは必ず指定された時間に注射してください。

(注意)
・hCG製剤は、排卵誘発剤ではありません。
・市販されている妊娠検査薬は、尿中に分泌されたhCGを検出するものです。従ってhCG製剤を注射した直後は、妊娠していなくても妊娠検査が陽性となります。

GnRHアゴニスト製剤とGnRHアンタゴニスト製剤について

自然排卵では卵胞が成熟し卵胞ホルモンが増加すると、下垂体からのLHホルモンの分泌が急激に上昇して排卵が起こります(これを“LHサージ”と言います)。
生殖補助医療において良い卵子を取り出すためには、卵胞が成熟するタイミングを見計らって採卵しなければなりません。採卵時期が早ければ未熟卵となり、遅ければ排卵してしまいます。
GnRHアゴニスト製剤とGnRHアンタゴニスト製剤は、下垂体からのLH分泌を抑える作用を持つため、これを利用すれば十分に卵胞を発育させ、かつ採卵前に卵胞が排卵してしまうことを防ぐことが可能となります。

GnRHアゴニスト製剤(点鼻薬)
商品名:スプレキュアイトレリンブセレキュア
GnRHアゴニスト製剤は、排卵を抑えるだけでなく、使用方法により卵胞の発育もコントロールします。
使用方法には前周期の黄体中期(月経前)より使用を開始する“ロング法”と、当周期の月経1〜2日目(月経後)より開始する“ショート法”とがあります。
それぞれに長所と短所があるため使い分けについては、個々に検討します。

ロング法とショート法の違い(目安)

使用
日数
注射
日数
卵子
の質
卵子
の数
黄体
機能
費用
L > S L ≧ S L ≧ S L ≦ S L ≦ S L > S

L:ロング法 S:ショート法

スプレキュア(イトレリン)の使い方
スプレキュア(イトレリン)は点鼻薬タイプのホルモン剤です。

・指定された開始日から「採卵 前々日の夜」まで使用して下さい。
・1日3回使用の場合には、およそ8時間の間隔で使用しますが、数時間のズレは影響ありません。
・鼻粘膜から吸収されますので、噴霧に合わせて「スッ」と軽く息を吸い込んで下さい。 ・鼻炎や鼻詰まりのある方は、鼻をよくかんでから使用して下さい。
 アレルギー鼻炎のある方は、抗アレルギー剤を併用しても問題ありません。
 抗アレルギー剤は、当院でも処方しておりますのでご相談下さい。
・新品のスプレキュアを使用する際には、「試し打ち」をして薬液が噴霧されるのを確認して下さい。2回目以降は確認は不要です。
 1ボトルで100プッシュ(1日6プッシュとして約16日間)使用できます。
・キャップを持つと、ボトル本体が滑り落ちて破損しますのでご注意下さい。
 またキャップがゆるみ易く液漏れを起こしますのでご注意下さい。
・スプレキュアはガラス容器、イトレリンはプラ容器です。
 イトレリンは残量が見えませんのでご注意下さい。

スプレキュアの副作用
頭痛、肩凝りなどの更年期症状が見られることがあります。
頭痛に対しては、市販の頭痛薬(アスピリン以外)を服用しても構いません。

あなたの使用方法

使用法 □ロング法     □ショート法
開始日 □月経開始後すぐ  □   月   日から
終了日 □採卵前々日の夜まで
使用方法 □両方  □片方  の鼻腔に噴霧
1日(   )回  起床時  昼〜夕刻  寝る前
使用例 8時  16時  24時

GnRHアンタゴニスト製剤(注射剤)
商品名:ガニレストセトロタイド
GnRHアンタゴニスト製剤は、下垂体からのFSH、LHホルモンの分泌を抑えます。その排卵抑制作用はGnRHアゴニスト製剤に比べ速効性があり、使用期間も短く済むのが特徴です。アゴニストに比べて卵子の質が改善したとの報告もあり、妊娠率の向上が期待されています。またクロミッドによる低刺激周期でも使用できることから、より確実に採卵できるようになりました。
本邦では諸外国に十数年遅れ、2006年に国内承認を受けた薬剤です。

hMG(FSH)製剤を用いる刺激周期では、GnRHアゴニスト製剤もしくはアンタゴニスト製剤を併用します。またクロミッドを用いる低刺激周期では、状況に応じてGnRHアンタゴニストを併用します。

  GnRH
アゴニスト
GnRH
アンタゴニスト
クロミッド周期
(低刺激)
切り替えに使用 症例に応じて使用
HMG/FSH周期
(刺激)
症例に応じて使用 症例に応じて使用

(注意)GnRHアゴニストとアンタゴニストは同じ周期で併用することはできません。

副作用は注射部位の発赤とかゆみです。かゆみ症状は、注射直後から数十分続き激烈な場合があります。徐々に軽減しますので搔かないで下さい。
氷などで冷やすとましになります。

採卵(経膣的卵胞穿刺)

採卵は、膣内に挿入した超音波検査によって卵巣の位置を確認しながら、細い穿刺針を押し進め、卵胞を穿刺することで行います。
採取された卵胞液には卵子が1個存在しており、顕微鏡で観察しながらこれを回収します。

膣壁の壁は薄く、針先を膣から数センチほど進めるだけで容易に卵巣に到達できます。
採卵の所要時間は、卵胞数によって異なりますが、卵胞が1個なら1分以内、5個なら3分、10個なら5分位が目安です。
採卵の痛みには個人差がありますが、おおむね自制内です。
しかし卵胞数が多い場合には採卵に時間を要しますので、卵胞数が5個以上の場合には、麻酔をお勧めしています。

採卵直前の診察で、例えば10個の卵胞が確認されていても、必ずしも10個の卵子が回収できる訳ではありません。卵子が未熟な「未成熟卵」や、卵胞中に卵子が存在しない「空胞」、卵子の不良品である「形成不全卵」、「変性卵」などがあり、これらは治療に使用することができません。こうした異常卵子は、誰にでも認められますが、年齢が進むにつれて増加します。

採卵 不妊不育治療センター 医療法人明日香会 ASKAレディースクリニック採卵の手順

①病室でガウンに着替え、麻酔用の点滴をします。採卵直前には排尿を済ませておいて下さい。
②採卵室で膣の洗浄を行った後、静脈麻酔をして採卵を始めます。
③終了後は病室で数時間の安静をとり、午後12〜13時頃の帰宅となります。

採卵時の注意事項

・採卵の際には、安全確保のために各種の生体モニターを使用します。
 血中酸素濃度を調べるモニターは人差し指に装着しますので、マニキュアやネイルは外して下さい。また化粧も控えめにして下さい。
 コンタクトレンズやメガネは外しておいて下さい。
・貴重品(現金)は、同伴者の方が管理して下さい。
 部屋には鍵のかかるロッカーがありますが、安全とは言い切れません。
・生理用ナプキン、ショーツ、下着を入れる小さなポーチをご用意下さい。
・月経開始から採卵日までの間に、アスピリン(バファリン)を服用することは避けて下さい。出血傾向のため採卵できなくなることがあります。
・喘息のある方は、ふだん使用しているスプレー剤を持参してください。

麻酔を受ける方へ

・当日は朝食を摂らずにお越し下さい。飲水はコップ一杯程度の水にとどめてください(牛乳やジュース、コーヒーは飲まないで下さい)。
 なお前日の夕食は、ふだん通りで結構です。
・使用する静脈麻酔は軽い全身麻酔であり、局所麻酔ではありません。
 麻酔中は意識や記憶が途切れます。
 麻酔の影響で悪心、嘔吐など気分が悪くなることがあります。
 麻酔が残ることがありますので、お帰りの際は車の運転をしないで下さい。
・麻酔を受ける場合は、麻酔料が別途必要となります。

採卵後の注意事項

・病室は個室もしくは2人部屋となっております。ご主人様は、一緒にお過ごしいただけますが、お子連れはご遠慮ください。
・採卵当日は夕刻〜夜半にかけてお腹の痛みを感じることがあります。
 希望の方には鎮痛剤を処方しております。当日は自宅にて安静を心がけ、外出は控えて下さい。家事は問題ありませんが、入浴はシャワーのみとして下さい。翌日以降は、ふだん通りで結構です。
・採卵後、数日すると卵巣過刺激症候群による腹満感と腹痛がみられますので、無理をしないで下さい。性交やスポーツ、発汗を伴う行為(サウナや長時間の入浴)、飲酒や喫煙は避けて下さい。また旅行もお勧めできません。

採精

採卵終了後、9〜10時頃にご主人様には”採精室“にて精液を採取していただきます。精液は採取後、精子分離剤を用いて遠心分離、洗浄濃縮を行い運動性の良好な精子を選別します。
体外受精では卵子1個に対して数万〜数十万個/mlという精子濃度が必要となります。そのため良好精子の回収が十分でなく規定濃度に達しない場合には、顕微授精に変更する場合があります。
顕微授精の場合には、卵子1個に対して精子1個あれば可能です。重症乏精子症、精子無力症などの極めて精子の少ない人においてもなるべく運動性が良く形態異常のない正常精子を選んで実施します。

採精方法

採精に先立っては、採卵日の3〜7日前に一度射精しておくのが理想的です。
それが無理な場合でも、禁欲期間ができるだけ2週間以上にならないように調整して下さい。また、ご主人様が出張などで不在となる場合には、事前に凍結保存した精子を使用することも可能です。ただし凍結精子を使用する場合は、融解時の精子の生存状態が悪くなるため顕微授精となります。

院内での採取方法
①院内にある精液採取のための部屋(採精室)にご案内します。
 採精室にはDVDを用意しております。
②精液は、マスターベーションによって採取して下さい。
③採取する前には手を洗って、専用容器に精液を直接射出して下さい。
 容器のフタをしっかり閉めて受付に提出して下さい。

(注意)採精は、採卵終了後の9〜10時頃になりますが、お仕事でお急ぎの場合には採卵前に採精することも可能ですので、スタッフにご相談下さい。

自宅で採取する場合の注意事項
自宅で採取する場合には、以下の点にご留意下さい。
①潤滑剤により精子が悪影響を受けますので、コンドームを使用して採取しないで下さい。
②採取後の精液は、常温(25〜34度)で保管して下さい。
 極端に暑い所や寒い所には放置しないで下さい(冷蔵庫で冷やしたり、カイロで暖めたりもしないで下さい)。
 寒い日にはタオルなどにくるみ人肌で保温して持参して下さい。
 発砲スチロール製の小さな容器があれば、それに保管するのが最適です。
③採取後の精液は、遅くとも3時間以内に持参して下さい。
 早いほど良い状態で使用できます。

媒精・培養

体外受精では、精子と卵子をシャーレの中で混和し、自然に近い状態で受精させます(媒精)。受精には一定基準の精子濃度が必要です。

顕微授精では、選別された1個の精子をマイクロピペットで卵子の細胞質中に注入して授精させます。この場合、精子が極めて少数でも可能です。

受精が成立すると約18〜24時間で前核期胚、48時間で4〜8分割胚(初期胚)、5〜6日で胞胚(胚盤胞)となります。

採卵の翌日には受精状態が確認できます。受精した卵子の個数をお伝えしますので、翌日の指定された時間に電話をおかけ下さい。

受精率の目安と受精障害

体外受精では採取した精液はそのまま使用するのではなく、選別操作を繰り返して良好な精子のみを用います。当日の精液の状態が悪く、必要な精子数を確保できない場合には顕微授精に変更となります。
体外受精や顕微授精を行っても、成熟卵の全てが受精する訳ではありません。
受精率の目安は、体外受精:6〜7割 顕微授精:7〜8割となります。
精子に問題がないと考えられる場合でも受精しない場合があり、これを“受精障害”と言います。この受精障害は予測不能です。

受精障害への対応

体外受精を行ったものの受精障害で受精していない場合に、採卵当日に顕微
授精に切り替える“レスキューICSI”や、翌日に顕微授精に切り替える“1day old ICSI”は異常受精が増えるため、当院では実施しておりません。受精障害によって治療が中断した場合には、再度仕切り直して採卵を行います。
受精障害は予期できませんので、初回の採卵時には体外受精と顕微授精の両方を行う“スプリット法”をご提案しております。

体外受精

体外受精 不妊不育治療センター 医療法人明日香会 ASKAレディースクリニック

顕微授精

顕微授精 不妊不育治療センター 医療法人明日香会 ASKAレディースクリニック

新鮮胚移植

受精後、卵割が順調にすすみ良好胚ができれば胚移植を行います。
胚移植には採卵後2〜3日目の“初期胚移植”と、5〜6日目の“胚盤胞移植”があります。当院では初回の移植は、原則として胚盤胞移植を行います。

胚移植の手順

①移植時間は13〜14時です。指定された時刻に来院して下さい。
②来院後、移植後の子宮の収縮を抑える薬を服用します。
③採卵室にて胚移植を行い(所要時間5分)、その後は15分間ベッドで安静をとります。
④当日、採血や注射を行う場合があります。

(注意)
・新鮮胚移植の日程は、採卵当日にお知らせいたします。
・胚移植時には麻酔は行いません(人工授精と同様で、強い痛みはありません)。
・移植から数日は激しい運動や性交渉は避けて下さい。自転車やバイクに乗る場合は、強い振動を避ける方が無難です。
・入浴は可能ですが、高温となるサウナや岩盤浴は避けて下さい。
・飲酒や喫煙は避けて下さい。また旅行もお勧めできません。

新鮮胚移植 不妊不育治療センター 医療法人明日香会 ASKAレディースクリニック

胚移植の実際

胚移植には様々な方法がありますが、受精卵の数やグレード、年齢などにより個々に検討されます。

移植胚の選択

初回 胚盤胞移植
2回目〜 胚盤胞移植または初期胚移植

移植数(日本産科婦人科学会の会告2008年)

35歳未満の人 1回目、2回目 原則1個
3回目以降 2個まで
35歳以上の人 1回目 2個まで

学会の会告により妊娠率の高い35歳未満は、多胎妊娠を防ぐために移植数が「原則1個」に制限されています。
なお当院では妊娠率が高い胚盤胞の移植数は、年齢を問わず1個としています。

孵化補助法

長期培養した胚(胚盤胞培養) 実施
35歳以上の人 実施
凍結受精卵 実施
FSH高値 実施
透明帯肥厚 実施

エンブリオグル

近年、胚移植用に開発された特殊な培養液です。ヒアルロン酸の作用により妊娠率の向上が期待されるため、当院では全症例に使用しております。

胚盤胞移植

受精卵は、2分割→4分割→8分割と分裂を続け、およそ5日目には“胚盤胞”と呼ばれる着床前の状態に至ります。従来は受精後2〜3日目の初期胚までの培養が技術的限界でしたが近年、培養液の開発により胚盤胞までの培養が可能となりました。
胚盤胞まで発育した良好胚を移植できるため、着床率が高いのが特徴です。移植数を少なく抑えることができるため、多胎妊娠の防止にもつながります。

胚盤胞移植 不妊不育治療センター 医療法人明日香会 ASKAレディースクリニック

胚盤胞のグレード分類(ガードナー分類)

胚盤胞は、受精後2〜3日目の分割卵とは違い胞胚と呼ばれる構造となります。喩えるならスイカの中身をくり抜いて中にリンゴを一つ入れた様な構造です。スイカの外皮の部分が透明帯、残った身の部分が外細胞塊、リンゴの部分が内細胞塊と呼ばれ、これが胎児になる部分です。これらの状態をA〜Cの3段階に分類してグレードを決めます。グレードの良いものほど妊娠率は高くなります。

グレードAA AB AC 不妊不育治療センター 医療法人明日香会 ASKAレディースクリニック グレード
AA AB AC
グレードBA BB BC 不妊不育治療センター 医療法人明日香会 ASKAレディースクリニック グレード
BA BB BC
グレードAA AB AC 不妊不育治療センター 医療法人明日香会 ASKAレディースクリニック グレード
CA CB CC
高い   ←   妊娠率   →   低い

当院では「グレードC」の胚盤胞の移植は原則行いません。

胚盤胞移植の特徴

長所

初期胚移植より高い妊娠率
(理由1)自然に近い移植
受精卵は、細胞分裂を繰り返しながら卵管から子宮へと移動し、子宮内で胚盤胞に到達した後、透明帯を破って孵化して子宮内膜に着床します。
本来はまだ卵管内にいるはずの初期胚を子宮内に移植する初期胚移植は、生理的とは言えません。移植された受精卵は、非生理的な環境で着床までの数日間を過ごさねばならず、順応できなければ途中で発育が停止してしまいます。
このことは初期胚移植が不成功となる一因とされます。初期胚を胚盤胞へ育てあげてから着床の準備のできた子宮に移植することで、より高い妊娠率が得られると考えられます。

(理由2)受精卵の選別
受精卵は、その半数に染色体異常があるとも言われ、全てが着床することはまずありません。こうした問題のある受精卵は、分割〜着床の段階である程度の淘汰を受けるからです。初期胚はグレードが良いほど妊娠率が高くなりますが、そうした受精卵でも培養を続けると、発育が途中で停止してしまうことがあるのはこうした理由によるものです。
初期胚移植を行っても妊娠しない場合には、子宮内で同様な事が起こっていると考えられます。初期胚が胚盤胞に到達する過程において受精卵がある程度の選別を受けることが、胚盤胞移植が高い妊娠率につながるもう一つの理由です。

多胎妊娠の防止
受精卵の移植数を増やせば妊娠率は上昇しますが、同時に多胎妊娠も増加します。着床率の高い胚盤胞移植では移植数を1個に制限しても高い妊娠率が得られます。つまり胚盤胞移植では高い妊娠率を維持しながら多胎妊娠を防ぐことができるのです。

子宮外妊娠の防止
受精卵を子宮内に移植しても意外にも子宮外妊娠は起こります。着床するまでの間に受精卵が卵管に逆行し、そこに着床してしまうことがあるからです。
初期胚は、一旦卵管に向かった後に子宮に戻ってくる(受精卵回帰)という仮説もあります。胚盤胞も卵管に移動することはありますが、移植から着床までの時間が短く早い段階で子宮内膜に着床するため、子宮外妊娠の発生が抑えられるのではないかと考えられています。
しかしながら実際には、子宮外妊娠を100%防ぐことはできておりません。

短所

胚移植キャンセル
受精卵のうち良好な胚盤胞に到達できる割合は30〜40%にとどまるため、受精卵が少ない場合には、胚盤胞が一つもできずに予定された移植がキャンセルになることがあります。

開発途上の培養液、培養技術
近年の培養液の進歩により実現可能となった胚盤胞移植ですが、胚盤胞への到達率は必ずしも満足できるものではなく、まだ改良の余地がありそうです。
また培養器の環境が体内に比して悪ければ、長期に培養するほど胚にとってはストレスにもなります。その結果、妊娠の可能性を持っている受精卵が培養の途中で淘汰されてしまい、妊娠の機会を逃していると考えられるケースが実際に存在します。

一卵性多胎
高度生殖補助医療による多胎妊娠の大半は、受精卵を複数個移植することが原因ですが、受精卵を1個しか移植していないのに多胎妊娠となる場合があります。この一卵性双胎は、受精から卵割、着床の過程で受精卵が二つに分断されることが原因で、胚盤胞培養などの長期培養では透明帯が硬化するため、孵化の際に受精卵が裂けて分断してしまうことが原因と考えられてきました。
しかし最近の研究では、培養器の中で胞胚が収縮と拡張を繰り返すことで、胎児になる内細胞塊が断裂するという事実も報告されています。
一卵性の多胎妊娠は、周産期管理が難しく、胎児が発育不良に陥ったり、流早産するなどの問題点があります。こうした現象については、今後さらなる検証と対策が必要であると思われます。

胚盤胞移植の特徴 不妊不育治療センター 医療法人明日香会 ASKAレディースクリニック

孵化補助法(AHA)

胚盤胞まで発育した受精卵が着床の際に胚を取り囲む透明帯という殻を破って外に出ることを孵化(ふか)と言います。たとえ良い受精卵であったとしても、この孵化がうまくできなかった場合には着床することができません。こうした孵化障害は、良好な受精卵を移植しても妊娠に至らない原因の一つと考えられています。

孵化障害には、胚の質に起因するものと、透明帯の構造に起因するものがあります。後者には透明帯の硬化や肥厚があり、これらは卵子の老化や受精卵を体外培養することによりもたらされる変化とされています。
こうした問題を防ぐため、透明帯部分に切開を加えたり、完全に取り除いたりすることで、胚の脱出を助ける技術が孵化補助法(AHA:アシステッドハッチング)です。

当院における孵化補助法の適応

以下の場合には、移植に際し孵化補助法を併用しております。

透明帯の硬化・肥厚が予想される場合
高年齢(35歳以上)の人
凍結受精卵を融解胚移植する場合
血中ホルモンのFSH値が上昇している人
長期培養された胚(胚盤胞培養)

その他の適応
良好胚を移植しても着床しない場合
反復不成功例

孵化補助法の種類

機械的方法(当院の方法)
マイクロピペットやレーザーを用いて透明帯に孔を開けたり、切開を加えたりする技術です。当院では、受精卵への影響が少ないレーザー光による透明帯菲薄化法を用いております。

透明帯切開法:透明帯に切開を加えて孔を開ける方法。

透明帯切開法 不妊不育治療センター 医療法人明日香会 ASKAレディースクリニック

化学的方法
薬液を用いて透明帯に孔を開けたり、透明帯を溶解したりする方法です。

孵化補助法の問題点

孵化補助法の有用性と安全性については、まだ十分には検証されておらず、 一定の見解もありません。さらに操作に伴い、胚に傷がつく可能性もありますので、適応については慎重に対処することにしております。

その他の補助技術
SEET(シート)法
受精卵の培養に用いた培養液を廃棄せずに凍結保存し、次周期に行う凍結胚盤胞の融解胚移植の前に子宮内に戻すことで、子宮内膜が着床しやすい環境となり妊娠率の向上が期待されるという治療法です。当院では希望の方に限り実施しております。

孵化補助法(AHA)

新鮮胚移植後には、黄体ホルモンを妊娠に必要なレベルに維持するために黄体刺激(補充)療法を行います。
hCG製剤は、排卵後の黄体を刺激して黄体ホルモンの分泌を促します(黄体刺激療法)。また黄体ホルモン製剤(内服、注射、坐薬)は、黄体ホルモンそのものを補充するものです(黄体補充療法)。
とりわけGnRH製剤を用いた採卵周期では、黄体機能不全が起こるため、これらのサポートは重要です。

具体的には胚移植前より服薬を開始し、必要に応じて注射剤や坐薬の投与も併用します。黄体刺激(補充)療法は、妊娠反応が陽性となった場合には、新鮮胚移植ではおよそ妊娠8週まで、ホルモン補充周期での凍結胚移植ではおよそ10週まで続けます。

(注意)
・黄体ホルモンの注射剤は、油性のため注射部位が赤く腫れて痛んだり、注射の跡が硬く残ることがあります。注射後はしっかりと揉みほぐしてください。
・黄体ホルモン剤により、便秘、湿疹、むかつき、胃もたれ、むくみ、頻尿などが起こることがあります。
・hCG製剤の注射により、腹部膨満や腹痛などの症状が出ることがあります(OHSS:後述)。

妊娠判定

妊娠週数は、便宜上、採卵日を「妊娠2週0日」として数えます。
妊娠4週に入った時点で、精密尿検査で妊娠判定を行います。
受精卵が順調に着床していれば、この時点で妊娠反応が陽性となりますが、陰性の場合は残念ながら不成功です。
判定前から月経様の出血や腹痛があっても正常に妊娠していることも多いので、自己判断せずに判定日には必ず受診して下さい。

妊娠週数と胎児像
妊娠4週目:妊娠反応が「陽性」となります。
妊娠5週目:赤ちゃんの部屋(胎嚢)が子宮内に見られます。
妊娠6週目:赤ちゃんの付属物(卵黄嚢)が見らます。
妊娠7週目:赤ちゃんの心拍が胎嚢内に見られます。

(注意)
・生殖補助医療による妊娠では年齢に応じて20〜40%が流産します。
・妊娠反応が陽性となっても胎嚢が見えてこない場合があり、これを“化学的妊娠(化学的流産)”と言います(後述)。一般に胎児心拍が確認されればそれ以降の流産の確率は、5〜10%に下がります。
・不成功に終わり、続けての採卵を希望される場合、卵巣の状態によっては、1ヵ月間の休憩が必要となります。
・妊娠していない場合でも黄体ホルモン剤の作用により高温期が続いたり、月経が遅れたりすることがあります。
・妊娠反応が陽性となった後も、妊娠8〜10週頃までは黄体ホルモンの服用を続けます。とりわけホルモン補充周期で融解胚移植を行う場合には、服用を続けないと、必ず流産しますのでご注意下さい。


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