保険診療と自由診療
日本には国民皆保険制度があり自己負担分を差し引いた残りの医療費は公的医療保険でまかなわれます。しかし全ての医療行為が際限なく保険適応されるわけではありません。不妊治療については保険が適応されない部分が多く、一般不妊治療の検査や治療の一部、人工授精、体外受精は保険の対象外です。こうした治療は自由診療として行われます。
保険診療が「できる時」と「できない時」の不可思議
保険診療では医療行為ごとに診療報酬(保険点数)が定められており全国一律ですが、一方の自由診療には料金の規定がないため施設により異なります。
また保険適応のある医療行為でも、治療の目的によっては保険が使えなくなることがあります。例えば排卵障害という病名で、排卵誘発剤が投与される場合は保険診療となりますが、体外受精などでこれらの投薬を使う場合には自由診療となり保険は使えません。
その他では排卵時期を予測するのに不可欠な超音波検査については、保険適応できる回数が定められています。従ってこの回数より多く検査を必要とする場合、多くの医院では自費料金を設定しています。
同じ医療行為を受けたのに料金が違うということが起こるのはこうした理由によるものです。
理解に苦しむ領収書
病院の会計で渡される診療報酬明細は、一般の人にはかなり理解しがたい内容のものです。「風邪を引いて血液検査を受け薬を処方された」場合、初診料、検査料、薬剤料が請求されることは理解できるのですが、検査料には採取料、判断料が加わり、さらに投薬料は薬剤料に処方料、調剤料などが加算されるとなると、「???」となります。
コンビニで買い物をする場合は、商品の値段を合算して消費税を乗せるだけですが、病院の支払金額は提示されるまでは金額が想像できません。
実はこの不可解な料金体系にはイヤになるほど細かい決まり事があります。
日常診療においては、こうしたルールを熟知した有資格者がレセプトコンピューターを操作して会計業務を行っております。しかし診療内容が複雑な場合、彼らでもパニックになることがあります。病院の会計で長い時間待たされるのは、こうしたトラブルが日常的に起こるからです。
診療報酬の内訳
診療報酬は以下の医療サービスの合算により算出されます。
治療費(診療報酬)= A診察料+B検査料+C投薬料+D処置料
A診察料
医院で診療行為を受けた場合に必ずかかる費用です。
具体的な治療や検査がなくても医師と話をしただけで算定されます。
遊園地の入場料のようなもので、アトラクションを利用しなくてもかかります。この診察料は病院と医院で異なります。また時間外加算、外来管理加算などが加わることもあります。
初診料282点(2820円) 患者負担額 840円
再診料73点(730円) 患者負担額 210円
B検査料
尿検査や血液検査などが行われた場合に請求されます。
検査料は「検体検査料+判断料+採取料」の3つの合計から算出されます。
検体検査料:検査にかかる料金
判断料:検査結果に対する医師の判断と指導
採取料:採血などの手技料
例)採血をして黄体ホルモンを測定した場合
検体検査料 159点
判断料:144点
採取料:25点 合計328点(3280円) 患者負担額 1,040円
C投薬料
投薬料は「薬剤費+処方料+調剤料」の3つの合計から算出されます。
調剤料については錠剤が主流な現代において、薬剤師が乳鉢で調剤する光景は見かけませんが、薬の服用方法や副作用などの指導料といったところでしょうか。
薬剤料:薬価
処方料:病状に対する医師の技術料
調剤料:薬局での処方手技料
例)排卵誘発剤クロミッド錠を1日1錠5日分処方した場合
薬剤料:50点
処方料:42点
調剤料:9点 合計101点(1010円) 患者負担額 300円