潜在性甲状腺機能低下症

甲状腺は喉(のど)にあるホルモンを分泌する臓器です。甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは新陳代謝や身体の成長に必要なホルモンです。この甲状腺ホルモンが過剰な状態をバセドウ氏病、不足している状態を橋本病と言います。
こうした甲状腺機能の異常は女性の数%に見られますが、軽度の異常の場合には自覚症状もなく、気づかずに過ごしている場合がほとんどです。
不妊や妊娠・出産に際しての特に注意が必要なのは甲状腺機能低下症です。
甲状腺ホルモンが少ないと不妊や流産の原因となりえます。また妊娠した際には胎児の発育に重篤な影響をおよぼす可能性があります。

甲状腺機能はTSH(甲状腺刺激ホルモン)を測定することで評価できます。
当院では不妊症の検査としてTSHの測定を行っています。この数値が異常である場合、追加検査として甲状腺ホルモン(free T4)と、甲状腺に対する自己抗体を調べます。

自己抗体

抗Tg抗体(抗サイログロブリン抗体)、抗TPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)、TRAb(TSHレセプター抗体)、TSAb(TSH性激性レセプター抗体)

検査結果と診断

 TSH  FreeT3 FreeT4 診断
高い 低い 低い 甲状腺ホルモンが不足
甲状腺機能低下症(橋本病)
高い 正常 正常 甲状腺ホルモンがわずかに不足
潜在性甲状腺機能低下症
低い 高い 高い 甲状腺ホルモンが過剰
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
低い 正常 正常 甲状腺ホルモンがわずかに過剰
潜在性甲状腺機能亢進症

検査によって橋本病やバセドウ病と診断された場合には、専門医に紹介いたします。
潜在性の機能低下症については、軽症であれば当院で治療しています。

潜在性甲状腺機能低下症の治療方法

甲状腺ホルモン(チラーヂンS)の服用
元々、身体にある甲状腺ホルモン(T4)なので適切な量を服用していれば副作用はありません。血液検査で甲状腺ホルモンの状態をモニターしながら、投与量を決めてゆきます。妊娠した場合にも服用を続けます。妊娠中に甲状腺ホルモンが不足すると流産したり、出生児の知能が低下したりする可能性があります。

日常生活で気をつけること

ヨードを多く含む食品の過食や薬剤の使用を避ける
食品:海藻類、ヨード卵
薬剤:イソジンうがい薬、風邪薬の一部、ヨードを含む造影剤

不妊症の検査である子宮卵管造影検査ではヨードを含む造影剤を使用しています。当院で使用している水性造影剤は一般的な油性造影剤に比べ短期間で体内から排泄されますので、検査後すぐに妊娠しても胎児への影響はありません。

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