多嚢胞性卵巣

多嚢胞性卵巣とは

月経不順をもたらす排卵障害の原因として一番多いのが多嚢胞性卵巣(PCO)と呼ばれる卵巣です。排卵障害に肥満、多毛などの症状が加わると多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と呼ばれる病態となります。原因は卵巣内の男性ホルモンの代謝異常とされ、インスリン抵抗性という糖代謝異常(糖尿病)とも関連しています。名前を聞くとなんだか難病と診断された気分になりますが、これは病気というよりは体質を言い表したものだと考えてください。

PCOの診断

PCOは臨床症状、ホルモン検査、超音波検査で診断されます。

月経異常:無月経、希発月経、無排卵周期が見られます。
血液検査:男性ホルモンが多く、LH値が高値となります。
超音波検査:卵巣表面に卵胞がぎっしり整列(ネックレスサイン)しています。

実際には診断基準を満たさない方も多く、“本物のPCO”から、やや卵胞が多めかな?と言った“PCOもどき”まで様々です。

治療の目安

PCOであっても自然に妊娠されている方はいくらでもおられます。
PCOで問題となるのは排卵障害が強い場合です。基礎体温できれいに二相性になっている方は心配ありません。月経周期が45日位までなら軽症です。月経周期が2〜3ヶ月と長い方や、月経が定期的にあっても体温が上がらずに茶色のオリモノや少量の出血が続く無排卵周期の方が治療の対象となります。

月経周期と治療の目安

30〜45日程度の月経周期の方
基礎体温が二相性であれば全く問題ありません。自然妊娠も可能です。

45〜60日程度の排卵周期の方
基礎体温が二相性であれば自然妊娠も可能ですが、自力でのタイミング合わせはなかなか難しいと思います。軽い排卵誘発剤を使用して排卵を誘導した方が性交渉のタイミングが取りやすくなります。

3ヶ月〜6ヶ月年の月経周期もしくは無月経の方
排卵は起こっていないので治療しないと妊娠は難しいと思われます。
軽い排卵誘発剤では排卵が起こらない場合には、作用の強い注射剤を試すことになります。

PCOの治療法

クロミッド 不妊不育治療センター 医療法人明日香会 ASKAレディースクリニック排卵誘発剤
第一選択となるのはクロミフェン(クロミッド、セロフェン)で、これが最初に試されます。
月経周期の5日目から5日間服用します。まずは1日1錠から開始し、効果がなければ1日2錠に増やします。それでも効果がなければ二段階投与法(この場合は保険適応外)を試したり、副腎皮質ステロイド剤(プレドニン錠)を併用したりします。

クロミフェンで排卵が起こらない場合には、注射の排卵誘発剤(FSH製剤)を使用します。FSH製剤は体外受精でも使用される作用の強い薬剤であるため、効き過ぎる場合があります。PCOの方では多数の卵胞が発育し、卵巣過刺激症候群という副作用を起こしやすいため注射の使用には細心の注意が必要です。
具体的には少量の薬剤を毎日続けて注射する方法が最良で、これにより最小限の排卵にとどめ副作用や多胎妊娠を避けることができます。

自己注射ができるキット 不妊不育治療センター 医療法人明日香会 ASKAレディースクリニック 毎日の注射の通院は大変なため、通常は自己注射ができるキットを用います。
このキットは保険適応ですが大変高価です。
注射を開始して早い人で10〜14日間で排卵が得られます。しかし3週間以上の注射が必要となることも多く、辛いだけでなく治療費も高くつきます。
頑張って4週間も注射を続けたのに、結局排卵しなかったということも度々経験します。逆に卵胞が育ちすぎて、副作用回避のために治療キャンセルという場合もあります。

注射を使ってなんとか排卵することができたとしても、すぐに妊娠するとは限りません。この治療を3周期も続けると大抵は泣きが入ります。従って少しでも妊娠率を上げるために人工授精を併用することも有効です。

インスリン抵抗性の改善
PCOの方は肥満であることも多く、糖代謝異常が見つかる場合があります。
インスリン抵抗性と言ってインスリンが持つ血糖を下げる作用が減弱している場合には血糖降下剤であるメトフォルミンが有効な場合があります。
クロミッドで排卵が得られない場合に試してみる価値があります。

インスリン抵抗性の検査
インスリン抵抗性は血液検査で評価できます。

空腹時血糖×空腹時インスリン値÷405で計算された数値(HOMR-R)が1.73以上であると“インスリン抵抗性あり”と診断されます。

メトフォルミン(グリコラン、メルビン)
1日3回食後に服用します。比較的マイルドに血糖を調整しますが、効き過ぎると低血糖症状が出ます。空腹時に脱力感や眠気を感じた場合には、すぐに糖分を摂取してください。また食事を摂らなかった場合は服用してはいけません。
さらに下痢の副作用のでる方もおられます。“軟便になって便秘が解消した”程度なら問題ありませんが、水様性の下痢が続く場合には中止してください。
インスリン抵抗性を改善する最良の方法は運動とダイエットです。
体重が減少することで排卵障害が解消することもあります。
しかしこれが一番難しい治療法かも知れません。

卵巣多孔術(LOD)
PCOに対する手術療法として古くから“楔状切除術”と言って、卵巣の一部を“楔形(くさびかた)”に切除する手術が行われてきました。最近ではこれに代わり腹腔鏡手術でレーザーなどを用いて卵巣に沢山の孔を開ける手術が行われています(多孔術)。その効果には個人差がありますが、自力で排卵するまでは改善しなくても、排卵誘発剤が効きやすくなることも多く有効な選択肢と考えられます。デメリットは、腹腔鏡手術は全身麻酔で行うため数日間の入院が必要となります。また手術の効果が生涯続くのではなく、一年ほどで元通りになってしてしまうことです。従って手術を行った後は、人工授精や体外受精などを取り入れ積極的に進めてゆく方が良いと考えます。

体外受精
排卵はできるものの妊娠に至らない、もしくは注射は効くものの卵胞数が多すぎて治療キャンセルが続いた場合などには検討しても良い治療法です。体外受精の時は卵胞数が多くても、採卵して受精卵を凍結保存するなどして副作用と多胎妊娠を回避することができます。

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