院長の今月のひとこと

2023/10/20

そろそろ書かないと、と思いつつ気がつけば秋になってしまいました。

「今月のひとこと」は「今年のひとこと」にタイトル変更しないとダメですね。

さて、医療と関係のない話題から。

高齢者ドライバーによる交通事故の報道が途切れませんね。

そう言うと、さも昨今の高齢者の運転は不注意になったかと思われがちですが、

単純に人口構成で高齢者人口が多数派なので件数も増えているのが実情でしょう。

高齢ドライバーは免許返納や適性診断が必要という議論と共に、代替手段がなければ

過疎地域では死活問題だとの論調が繰り返されております。

一方で職業ドライバーの減少は地方ほど深刻なため、個人タクシーの上限年齢は

80歳まで引き上げることになりました。

地域のコミューターはこうした相反する問題に直面しているようです。

AI搭載の完全自動運転の導入が望まれるところですが、軽自動車がやっと入れるような

路地にある玄関先まで迎えに来てくれるのは、いつのことでしょうか。

運転に限らず高齢者となればあらゆる身体能力は衰えてきます。

それに反して運転技術に対する自信は高齢者で高いというアンケート結果が出ています。

「(ある程度)自信がある」と答える割合は、65歳まではおよそ40%ですが、70代で

60%、80代で70%と増える傾向があります。

現在より事故の多かった昭和の交通戦争を乗り越えてきたのだから運転には自信がある

と言わんばかりですが、同時に自分の注意力だけでは避けられない不測の状況が起こり

うることも学習しているはずです。運転に伴うリスクと人間の認知機能の限界を意識して

ハンドルを握れば過度な自信は生まれないはずなのですが、それが過信だと認識できない

とすれば、それは認知障害の表れでしょう。

家族が忠告しても「オレの運転は大丈夫だ」と譲らない、かたくなな高齢者への対応は

悩ましいところです。自損ならまだしも人身事故となると被害者と当事者、その家族の

人生を大きく変えてしまいますので、慎重の上にも慎重な運転が求められますね。

なんだか聞いたようなことを偉そうに語っている私ですが、今回の本題は医療従事者が

置かれている状況も同じだろうという話です。

実は医師免許には返納義務はありません。それどころか更新手続きすらないのです。

これは驚きですよね。一度取得すれば死ぬまで医師であり続けられます。

航空機のパイロットの定年は国交省の通達で65歳まで引き上げられたようですが、

同じく命を預かる医師免許にはそもそも定年がないのです。一方で医療の難易度は、

経験年数を問わず同じですので、医療事故を回避する上では、衰える認知能力や

技能を自分でどう判断して身を引く時期を決めるかは重要なこととなります。

不妊治療は救急医療ほどの緊張感は無いものの、受精卵という命を扱っているだけに

他にない緊張と重圧があります。このストレスを例えると「高速道路を朝から晩まで

時速120キロで走っている」感覚です。道路状況や周囲の車の挙動を観察し危険を

予想する一方で、パンクや路上落下物、飛び出しなど予想できない事への想定をしつつの

高速巡航は、医療に通じると考えています。医療には持続的で精緻かつ高度な認知能力が

求められています。

さらに不妊治療の場合、成功、不成功がはっきりと結果に表れます。

妊娠判定日は患者さんと同様に我々も大きなストレスにさらされています。我々にとって

妊娠判定陽性は喜びというより安堵、陰性は悲しみというより落胆となります。

患者さんの涙は我々の心に降る敗北の雨です。安易な励ましや楽観は通じないことは

分かっていても、何かの形で寄り添わねばならない。しかし現実に気の利いた言葉など

あるはずもなく、苦渋は悶々として心に積もります。

生殖医療には技能だけでなく、こうしたご夫婦に共感共感できるメンタリティーが

必要となります。それゆえ、経験を積んで培ったこだわりや自負がいつか欺瞞や老害に

ならないように、自分に少しでも不安を感じたなら潔く免許返納も考えるべきでしょう。

そうした日が遠くない将来に訪れることを想定して日々の診療にあたっております。

今回も湿っぽくなりました。(T_T) これで「今月の泣きごと」を終わります。

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2023/05/15

皆様、だーいぶご無沙汰しております。

コロナ禍も一段落しましたかね〜?

マスクのせいか私の無表情(無感情ではありません!)も患者さん受けがさらに悪くなり(?)、

こちらとしても初診から卒業までご夫婦のマスク姿のお顔しか拝見できず、なんとも寂しい思いです。

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先日、医大の後輩で呼吸器内科医師である鈴木夕子先生が大腸癌ステージ4で闘病されている勇姿が

NHKでクローズアップされ感涙しておりました。

彼女とは、いままで話しをしたこともない関係だったのですが、思い切ってメッセージを送ったところ

お返事が届き、闘病を応援するメンバーの一員になれたのかなと思っております。

職場で自ら抗がん剤の点滴を受けながら、同じく癌と闘う患者さん達の診療に

どこまでも前向きに明るく応じる姿は、彼女の「諦めない」という強い意志によるものです。

しかし一方で彼女も不安が一杯で泣き叫びたいという心境を吐露しております。

そりゃあそうです。医師と言えども、病気は怖いです。

そして強い人間なんていません。

強くなろうとする人間が強いだけです。

私はどうだろう、、自らの不幸を悲しんでばかりいて、ダメだなー、小さいわ〜。

先生を応援しているようで、実はこちらが生きる力を貰っているのですよね。

無力ながら力強く生きようとされる鈴木先生を見守って行きたいと思います。

NHKサイト

https://www.nhk.jp/p/hokkaidodo/ts/2J211716Z5/episode/te/7MG12GZ6V7/

Yahooニュース

https://news.yahoo.co.jp/articles/d96fcffdaf2b772947e2a181a16bb5f06a6af952

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話は変わりまして先日、職員の発案で「運動をする会」が開かれました。

市内の体育館を借りて、球技やチャンバラゲームに興じました。

スタッフも軒並み高齢化しており、思ったように動かぬ手足にムチを打つ良い機会になったかな。

心地よい五月の風が体育館を吹き抜けます。

汗が気持の良い季節ですね。

もっとも、運動の後の飲み会の方が楽しかったのですがね(笑)。

コロナも開けたので、そろそろ社会も私も再起動しましょうか?!

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2022/09/09

唐突ですが最近、野菜の美味しさにはまっています。

食卓に出されても、あまり触手が伸びなかったのですが、

一人暮らしのため意識的に取り入れるようにしたところ、

旬野菜の美味しさに気がついたのです。

(^^)/

休日に旬の駅などの産直で両手に買い物カゴを抱えて、

買いあさる光景は患者さんには見られたくないかも(笑)。

ついつい買いすぎてしまいますね〜。

(^◇^)

グリル野菜からピクルス、煮炊きしたものまでレパートリーを広げております。

レシピはネット情報にアレンジを加え、あくまでオリジナルな男の料理を目指します。

そのなかでも先日作ったポテサラは自分史上(と言っても初めて作った)

最高の味となりました。具体的にはキュウリのしなびた食感が苦手なので、

最初に塩もみして水気を絞り切ることで解消。ポテトは湯がいたあとしっかりと

水分を飛ばしホクホク感を引き出します。みじん切りした玉ネギは食感のアクセントとして。

マヨにゆで卵を加えワインビネガーで酸味を調節。そしてここが最大のポイントなのですが、

柚子胡椒を加え大人の味を演出します!玉ネギの食感と柚子胡椒のニュアンスがはえる

ポテサラの完成です!

どうでしょうか?試してみたくなったでしょ?(笑)。

(^ニ^)

でも最後に加える一番の隠し味は、“妻との想い出”ですね。

あふれる涙は刻んだタマネギのせいにしておきましょう。

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2022年6月17日

先日、妻の百箇日の法要が終わりました。

百箇日をネットで調べてみると、「卒哭忌(そっこくき)」とも呼ばれ、

激しく泣く(哭)状態から卒業する法要で、悲しみに一区切りをつけ、

それぞれの日常に戻ってゆくための節目と書いてありました。

なるほど、いにしえの人は悲しみのプロセスを的確にウオッチングしていますね。

仏陀も「嘆き悲しんで自己をそこなうことに何らかの益があろうか」と言っている

ようです。

いつまでも悲しんでいても仕方が無いことと分かってはおりますが、なかなか心の

整理はつかないものです。 我々は子供にも恵まれませんでしたので、私は五十半ばにして一人者になってしまい

ました。

いきなり目標を失ってしまった人生。さてこの先、どうやって生きてゆきましょうか、、。

(>_<)

でも妻の死で教えられたことがあります。

「本当に大切な者(物)って失って初めて分かる」と言いますが、本当にそうでした。

妻は大切な人だと考えておりましたが、その認識を遙かに越えて私にとっては欠くことの

出来ない存在だったと、遅ればせながら気づかされたのです。

もともと家事は嫌いではありませんでしたので、そこに不自由さを感じているという訳では

ありません。何をしていても一人であることが、これほど耐え難いと事とは考えてなかったのです。

(T_T)

大切なモノって空気みたいに自分を取り巻いているのに見ることができない。

風が吹いて空気の存在に気づく。平和や健康、仕事や生活、同僚や友人もみなそんな存在

なのかなと改めて感じているところです。

つまり私はいま、大切な人たちに囲まれて、日常を生きている、、。

このことに感謝して与えられた仕事に励むしかないのかな、、。

そう思えるようになったことは、私にとっての「卒哭忌」なのでしょうね。

涙ぐむ毎日から少しでも前進できればと思います。

今回は医療とは関係のないプライベートなお話しとなりました。

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                                                     2022年5月16日 だいぶ久々の投稿となりました。 不妊治療の保険適応導入ですったもんだし、個人的にも大きな不幸事もあって、公私ともに平穏ならぬ状態が続いておりました。 少し落ち着きを取り戻してまいりましたので、再開させていただきます。 2022年4月、不妊治療の保険適応が拡充されました。一般不妊治療の人工授精、高度生殖補助医療の体外受精と顕微授精が保険診療で実施することが可能となります。 体外受精の保険適応は20年前からも要望があった懸案ですが、ようやく実現となりました。 しかし、事はそう単純ではありませんでした。自由診療として料金的にも技術的にも「自由」に発展してきた日本の生殖医療。保険診療の枠に収まらない怪物になっていたのです。 料金だけをみてもクリニックにより体外受精1回が20万円〜100万円の開きがあり、統一料金など到底無理なことがわかります。結局、平均額である45万円前後に価格設定がなされたようですが、採算割れする可能性があるため、一等地や多くの職員を抱える都市部の 医院では死活問題となります。その他、保険収載が見送られた技術や医薬品もあり、手持ちのカードが制限された不自由な状態となりました。 一方、最も重要な患者さんの自己負担金についても、助成金時代の方が、負担が少なかったという方も出てくるはずです。また治療回数についても年齢に応じた回数が設定されており、無制限に治療が続けられる訳ではありません。 あまりにも拙速に制度設計が行われたため、実態を反映しないいびつな内容となり、現場からは悲鳴やら怒号やら諦めやらが噴出しております。 とは言え、始まってしまったものは仕方ありません。保険診療の範囲内で結果を出す努力をしてまいります。患者様にも以前とは違った治療や料金となる可能性がありますので、 不明な点があればお問い合わせください。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2022年1月20日

皆さんこんにちは。看護師の一庵(いちあん)です。今日は院長にかわって「師長のひとこと」を担当させていただきます。

当院に8年近く通院し、子どもを授かることが叶わず卒院された方からのお手紙をいただきましたので、ご本人の了承を得て

みなさまにご紹介します。

長い人生、良いこと悪いこと様々なことがあり、全てが人生の糧になっていくのだと改めて教えてもらいました。

子どもを授かりたいと切実な願いを持ち通院されている方の中には、子どもが授かれなければ人生終わり、不幸だと思い詰めて考えてしまう方もおられるかも知れません。お手紙のような人生もあるのだと知っていただければ幸いです。

お手紙(抜粋)

「長い期間お世話になり、残念ながら子どもを授かるという願いは叶いませんでしたが、心の整理やいろいろな状況が落ち着いたらお礼を伝えたいと思っていました。

通院中は皆さまに良くしていただき、辛かった治療も乗り越えることができました。流産したときやうまくいかないもどかしさで何度も話を聞いていただき、その都度、救われました。背中をさすり「泣いてくださいね」「泣いても大丈夫ですよ」と声をかけていただいた時には大泣きしたことを覚えています。

自分自身が納得をしてやりきったという気持ちで卒院することができたことには感謝しかありません。

卒院後、行政の里親研修を受け、里親登録をしました。

その後、特別養子縁組をして親となりました。毎日、大変ですが育児はすごく楽しいです。命の重みは流産の経験もあり、すごく理解しています。大袈裟かもしれませんが、今の私があるのも通院していた期間があったからだと思っています。長い間、頑張った分、今ここにいる我が子が愛おしくてたまりません。あの時間は私にとって本当に大切なものです。」

当院では里親制度のご案内もいたしております。ご検討中の方は、一庵までお申し出ください。

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2021年11月6日

最近、DXって言葉をみかけますね。 デジタルトランスフォーメーションの訳で、「デジタル技術により、生活をより良いものへ変革する」 という意味のようです。医療におけるDXは何だろう?と考えると、電子カルテが思い浮かびます。 20年ほど前から取り入れる病院が増え始め、最近では診療所でも導入している所が増えました。 さらに病院の場合は、検査や投薬および会計が連動したオーダリングシステムとなっているため、 患者側としても便利になったな〜と感心します。

さて、その医院が電子カルテかそうでないかを、一目で見分ける方法があります。 少々イヤミな言い方ですが、あなたが診察室に入り、医師があなたの顔よりモニター画面を見ている 時間が多ければ、電子カルテです。どうしてそうなるかと言うと、電子カルテはとにかく入力作業が 煩雑です。 医師はまずあなたの訴えを聞き、文字に起こします。そこから疑い病名を思い描き、それに合わせて 検査をオーダーします。検査の結果を見て、診断を確定するという一連の過程をカルテに残さねば なりません。そしてようやく診断名を登録し、それに基づいた処方を考え、処方箋を発行します。 最後に次回の診察予約を取り終了です。 医師が医療事務も兼ねているため、作業に時間が取られますが、その後は会計に直結するので、 待ち時間は発生しません。ただし1人1人に時間を取られるため、多くの患者さんを見るのには限度が あります。

で、当院はと言うと、相変わらず紙カルテです。理由は簡便で、自由度が高い。治療歴が俯瞰しやすい。 保険診療と自由診療の使い分けが楽。そして最大のメリットは、患者さんの顔を見られる(笑)。

話は外れますが、当院をはじめ多くの不妊クリニックでは、予約が取れない、待ち時間が長いという ご指摘が絶えません。本当にすいません。このことは職員一同、気に病んでおります。 予約が取れない理由は、仕事終わりに来院される方が多く、予約が同じ時間に集中するためです。 仕事と妊活の両立は簡単ではありませんよね。一部の企業では、対応を始めておりますが、 スタッフの少ない職場や、責任者の場合には、妊活を理由に仕事に穴を開けることはできないでしょう。 将来を引き継ぐ子供を作ろうとしている方は、社会で最優先されるべきです。高齢者ばかりではなく、 妊活や育児を優先できる国に、早くなって欲しいと思います。

待ち時間が長い理由は2つあります。 ひとつはマンパワー。医師2体制で対応しておりますが、これがパフォーマンスの限界です。 医師3人以上のクリニックでは、診察できる患者さんの数は増えますが、医師による方針の相違を理由に、 転院されてくる患者さんも多いのです。患者さんにとっては、これも一長一短ですね。

もう一つは、院外処方ができないことです。不妊治療では、月経周期に合わせての受診と服薬が必要となります。 夜診や休日に処方した場合、調剤薬局が開いてないので大変こまります。また処方の多くは保険適応ではないため、 そもそも院外処方することができません。

問題は山積しておりますが、DXを取り入れて、なんとかサービス向上に努めたいと思っています。

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2021年9月15日

今日は不妊治療のお金の話です。 来春の不妊治療の保険適応拡大に向けての事務作業が進んでいるようですね。 「えっ?不妊治療って保険効かないの?」と驚かれている方も多いでしょうね。 実際に治療を始めてみて、病院の支払い明細を見て実感されているのではないでしょうか。 治療を提供している我々が一番、違和感を感じているくらいですから。

保険が効かない理由は、不妊の原因が多岐におよぶこと、調べた結果として原因不明も多いこと、 そして生殖医療の進歩のスピードに保険制度が対応できていないことがあげられます。 ひとつ例にあげてみましょう。不妊治療を大きく変えたイノベーションって何だと思いますか? 答えは超音波診断装置です。 超音波検査は産婦人科におけるIT革命並の激変をもたらしました。 超音波検査が本格的に産婦人科に導入されたのは1980年代。当時の経腹超音波検査は精度も 良くなかったため、胎児の発育の確認が主でした。 現在、主流となっている経膣超音波検査は90年代からのものです。 それまでは基礎体温や子宮頸管粘液などの間接的な検査により“だいたいの排卵日”を予想 してきましたが、まあ当たりませんでした。超音波検査の導入により卵胞の発育が直接肉眼的に 評価できるようになり、不妊治療は大きく進歩しました。

いまや不妊治療には欠かすことのできない超音波検査ですが、自然周期の排卵日を調べることを 目的とした使用は保険が効きません。 「なんで〜?」と思いますが、理由は排卵日の予想のための超音波検査は病気の原因を調べる 場合とは使用目的が違うからです。 排卵障害の人の場合は排卵誘発剤を使用しますので、この場合は病名がつくので超音波検査は 保険適応となります。ただしその場合でも月に2〜3回までと上限があります。

理屈を言われればそれまでですが、タイミング法は不妊治療の最も基本的な治療であるにも 関わらず、保険が認められない現状はどう考えてもおかしいですよね。 超音波検査が臨床の現場に導入されて30年も経過しているのにこの状態なのです。 これって関連各所の怠慢ですよね。

それだけではありません。超音波検査は1回の検査料が5300円もします。 ものの数秒で終わる卵胞計測にしては高額過ぎます。超音波検査は、昔は1台数千万円したため、 検査の点数もそれに見合ったものとなっていますが、現在はモノクロタイプだと200万円程度です。 それなのに点数はアップデートされず、当時とあまり変わっていないのです。

来春の保険適応拡大に期待する声が大きいですが、こういった状況を考えると、今回の保険適応の 拡大が現状に即した細やかな内容になるとは到底思えません。

この点を我々は大きく心配しております。

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2021年8月18日

若者のスポーツ観戦離れが進んでいるそうで、長時間の試合が敬遠される時代になったと ネット記事にありました。バブル以降、重厚長大から軽薄短小へと時代は移っておりますが、 スマホの普及でさらに加速していると感じます。あらゆる場面で“時短”に触れることも多くなりました。

外来診療でも治療に必要な情報を説明書として紙媒体でお渡しするのですが、様々なネット情報や不安が 入り乱れている中でそれらを網羅して正確かつ丁寧に伝えることを心がけると、マニュアルは分厚くなってしまい、 時代に逆行しているジレンマを感じます。 かくいう私も家電の取説には目もくれず、スタートアップマニュアルしか読みません(笑)。

治療や検査について患者さんから受ける質問事項もほとんどがマニュアルに書いていることばかりです。 質問する側としては書いてある事の確認の意味合いもあると思うのですが、同じ返答の繰り返しに疲れて ゲッソリすることも多く、「何を伝えるか」より「どのようにして伝えるか」が大事だと日々、痛感しております。 伝える側としては、伝えたつもりでも伝わっておらず、また聞く側にしては、聞きたいことにしか耳を傾けないものです。

とりわけ体外受精の説明書(冊子)は100ページにもおよびます。内容としては10ページも読めば、 あくびが出る退屈なものです。これを熟読するように求めるのも歯がゆいのですが、何か健康上の問題が生じた場合、 「聞いていなかった」と言われても困るので、書かない訳にもゆかない。 しかしそうした問題は全ての人に起こる訳でもないため、かえって不安をあおることにもなりかねない、、、。 情報提供する側として悩みはつきません。 また世の中には色々な方がおられますので、受け取り方も様々です。 そのため可能性が低くても、重大な事象については当事者としては触れておく必要があるとも考えております。

以前、大学病院で研修医が「この検査で死ぬことがあります」と説明して患者さんを泣かせたことがありました。 これは予期せぬ説明だったからでしょう。これは伝え方に問題があったと考えられます。 しかるに飛行機に搭乗するとき機長から「墜落する可能性はゼロではありません」というアナウンスは聞いたことが ありませんし、乗客が泣き出すこともありません。その可能性のことを乗客は知っているからです。

そういえば以前、家電の取説の冒頭のページに「食べられません」と注意書きがしてあったのをみて 大笑いしたことがありました。何でも伝えれば良いという訳でもありませんね。

伝えたいことが多すぎて、最重要なことも伝わらないとあっては一体何をしているのやらと苦笑します。 当院では現在、こうした観点から患者さん用の説明書やマニュアルの見直し作業に取り組んでいます。 具体的には図式やイラスト、漫画、動画などによる方法を模索中です。

そう言いつつ、いけませんね。このコラムも長文になってしまいました。

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2021年6月9日

「今月ひとこと」のタイトルは、どこへやら(笑)。 かなり久しぶりの投稿です。

従来、院内で閲覧できた「私の妊娠報告書」は感染防止のため 現在は手に取ってご覧になることができません。その代わりに データ化した紙ファイルのホームページへのUp作業が進行中ですので そちらをご覧ください。

さて報告書のコメント欄に「院長はあまり笑わない」という記載が 散見されます。 コロナ禍でマスク着用なので口元の表情が読めないため 目だけで感情を表現することの難しさがあるものの、 笑うことが少ないのは事実でしょう。 まあ「いつもニヤニヤしています」よりはいいかと思っています。

別に怒っている訳でも機嫌が悪い訳でもありませんが、 外来診療では「笑わない」のではなく、「笑えない」状況が多いというのが 実情です。

例えば流産を繰り返されている方が妊娠された場合 妊娠の始まりは流産の始まりとも言えます。 流産を経験している方の場合、妊娠判定陽性を伝えても笑顔は控えめです。 心配と緊張のため表情が硬いのが見て取れます。 こちらもそれが分かるので、満面の笑みという気持ちにはなりません。 卒業するまで(正確に言うと出産を終えるまで)は安易に「妊娠おめでとう」とは 言えないのです。

逆に初めての妊娠を心から喜んでいる方の場合 喜びの対面のはずが、私の無表情に違和感を感じられるかも知れません。 経過が順調でも翌週には流産となっている場合があります。 年齢によりますが20〜40%の確率で流産は起こるのが現状です。 そうした可能性を考えると“笑顔”の「おめでた宣言」は慎重になってしまいます。

流産された方の場合 かなりの確率で泣かれます。 苦労の末の妊娠ゆえ、こちらも泣けてきます。 この状況で私がおかけする言葉は無力で支えになっていないかも知れません。 ただただ結果を共有し悲しみに共感するしかできません。

妊娠判定陰性が続く方の場合 治療を続ければ可能性があることを伝え、その上で次の治療の提案をします。 しかし十分頑張っている方に“笑顔”で安易な励ましはできません。 患者さんのネガティブな気持ちを逆撫でることにもなりかねません。 気持ちがポジティブに変わるのには時間も必要です。

と言った具合に、喜びと悲しみが入れ替わる悲喜こもごもの外来診療において こちらの感情のスイッチの入れ替えは頻回になり、これはかなり疲れます。 前の流産した方への思いを引きずって、次の妊娠された方の診療に 当たることも多いため、重く険しい表情になっていることも あるだろうなと思います。

できるだけ笑うようにできれば良いのですが、、、 まあこんな状況をお察しいただければ幸いです。

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