排卵誘発法

排卵誘発剤は本来、排卵のない人に使用されますが、正常に排卵している人に使用しても妊娠率の上昇が期待されます。排卵誘発法は不妊原因が不明で自然排卵タイミング法によっても妊娠に至らない場合に試してみる価値のある治療法です。副作用もありますので有用性が上回る場合に使用を続けます。

排卵誘発剤クロミッド錠(クロミフェン)について

成分名:クエン酸クロミフェン
薬価:1錠120円(保険3割負担なら、40円程度)

クロミッド類似薬

クエン酸クロミフェン製剤:セロフェン、スパクロミン
シクロフェニル製剤:セキソビット

クロミッドは半世紀に渡って世界的に使用され、今なお色あせることのない良薬です。身体への負担が少なく、一般の産婦人科医院でも処方される最もポピュラーな不妊治療薬です。排卵障害や希発排卵に対しての排卵誘発作用だけでなく、黄体機能不全や原因不明不妊症での有用性が報告されており、タイミング法から体外受精まで幅広く使用されています。
比較的気軽に服用できる一方で特有のクセもあるため、処方に際して細かい注意を怠ると、副作用のためかえって妊娠しにくくなることがあります。

服用方法

1日1〜3錠を月経周期の3〜5日目から5日間服用します。超音波検査で卵胞の大きさを測定し、成熟卵胞(卵胞径18〜23mm程度)になれば、最後にHCG製剤を注射して排卵を促し性交渉します。HCG製剤を投与しないと卵胞はそのまま大きく育ってゆき、過熟卵(質の低下)になる場合があります。

メリット

無排卵や月経不順の改善 無排卵の人は排卵します。また月経不順の人も使用中は順調な周期になります。
排卵数の変化 自然周期では1個ですが、クロミッド周期では2〜4個の排卵も期待されます。ただし1個の時も多いです。
卵子の質の変化 排卵させる時期によって、卵子の成熟度を調整できます。
黄体機能の改善 黄体ホルモンの分泌が改善します。
排卵日の調整 HCG製剤を打つタイミングで排卵日を調整します。

デメリット・副作用

自覚される副作用 頭痛、視覚異常(かすみ目、二重に見える)、吐き気、イライラ感、不安感、便秘、眠気、倦怠感、これらは気にならない程度なら心配いりません。
頭痛に対しては市販の頭痛薬を服用してください。
子宮頸管粘液の減少 フーナーテストの結果が悪くなり、妊娠しにくくなります。また性交痛を感じることがあります。
エストロゲン(プレマリン錠)の服用で改善します。
排卵に関連した腹痛 服用中、排卵時(hCG注射後1〜2日)、排卵後(hCG注射後3〜5日)に腹痛が見られることがあります。
多胎妊娠の可能性 服用して妊娠した人の内、5%が多胎(双胎)になります。
帝王切開術既往の方は注意が必要です。
子宮内膜が薄くなる可能性 薄くなり過ぎると着床障害となる可能性があります。
その場合には使用の中止を検討します。
月経量の変化 月経量が減少し、日数が短くなります。
月経痛の変化 月経痛が強くなることがあります。
不正出血・排卵出血 排卵期に出血が見られることがあります。
月経開始前に茶色の出血が続くことがあります。
膜様月経 月経時に膜状〜袋状の内膜が出ることがあります。
卵巣過刺激症候群(OHSS) 多数の排卵が起こった場合、排卵後に卵巣が腫れて腹痛や膨満感が見られます。日にち薬で改善します。
黄体嚢胞 排卵後の卵胞(黄体)が妊娠した際に腫れて黄体嚢胞となる場合があります。
遺残卵胞 卵胞が複数発育した場合、排卵せずに残った卵胞が翌月に持ち越すことがあります。
月経中の診察で遺残卵胞が確認された場合には、その周期の服薬を見送ります。
基礎体温の上昇 服用期間中には体温がわずかに上昇します。
肝機能障害 肝臓の悪い方は服用できません。

不適切な服用方法

  • 不妊の検査をすることなく処方される。
  • 自然排卵の有無を確認することなく処方される。
  • 排卵誘発剤であるとの説明なく「とりあえず、飲んどいて」と処方される。
  • 副作用についての説明がない。
  • 子供がいる人(特に帝王切開術を受けた人)に対する多胎妊娠の説明がない。
  • 超音波検査による卵胞計測がなく、基礎体温だけでタイミング指導される。
  • 適切な時期に排卵を促すHCG製剤の投与がない。
  • 排卵の確認のための診察がない。
  • 月経中に遺残卵胞の有無を確認しない。
  • 子宮頸管粘液の評価、性交後試験(フーナーテスト)が行われない。
  • 子宮内膜の厚みが測定されていない。
  • 1年以上にわたり、計画性なく漫然と処方されている。
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