高プロラクチン血症

プロラクチンは脳下垂体前葉から分泌される乳汁分泌を促すホルモンですが、非妊時にも分泌されておりその意義については十分解明されていません。
月経不順(排卵障害)や黄体機能不全、流産の原因になるとも言われ、また最近では卵の発育や成熟、受精に関与する作用も報告され、生殖の様々な局面に係わるホルモンであることが分かってきました。

高プロラクチン血症の症状

代表的な症状を記しますが無症状の場合も多いです。
女性:無月経 月経不順 黄体機能不全 乳汁漏出(分泌) 乳房緊満
男性:性欲低下 インポテンス(ED)

高プロラクチン血症の原因

プロラクチンは変動しやすいデリケートなホルモンです。朝と夜、食前と食後でも値が変動します。その他の原因としては多いのは抗不安薬や胃薬服用による薬剤性です。下垂体腺腫が原因となる場合も散見されます。

生理的変動:乳頭刺激 妊娠 産褥 ストレス 摂食
内科的原因:プロラクチン産生下垂体腺腫 先端巨大症 クッシング病 原発性甲状腺機能低下症 腎不全 多嚢胞性卵巣症候群
薬剤性
胃薬)H2ブロッカー(ガスター、タガメット)、ドグマチール
制吐剤)プリンペラン、ナウゼリン
向精神薬
・メジャートランキライザー:ウインタミン、コントミン、メレリル、レボトミン、ノバミン、PZC、セレネース
・マイナートランキライザー:セルシン、セレナール、レキソタン、アタラックス、コントール
・抗うつ剤:トフラニール、イミドール、リーマス、ドグマチール
その他)避妊ピル

高プロラクチン血症の治療

正常値3.4〜24.1(正常値は検査法によって異なります)

プロラクチン値 検査・治療の目安
24.1〜50 期間をあけて再検査。症状がある場合には内服薬処方。
50〜100 期間をあけて再検査。内服薬処方。頭部MRI検査を検討。
100〜 頭部MRI検査にて異常がなければ内服薬処方。

まずは内科的合併症、薬剤性を除外診断した上で以下の方針で対応します。

軽度の上昇(PRL:24.1〜50)
後日、再検査を実施。乳汁分泌が見られるか排卵障害がある場合には治療薬であるカバサールもしくはテルロンを服用してもらいます。症状がなければ定期的な検査のみで経過観察することもあります。

中等度の上昇(PRL:50〜100)
期間をあけての再検査で低下がない場合には、頭部MRI検査を実施して下垂体腺腫の有無の確認を行います。症状の有無を問わず内服治療を行います。

重度の上昇(PRL:100以上)
頭部MRI検査を行います。異常がなければ内服治療を行い慎重にフォローします。

この治療の目安は確定的なものではありません。産後の授乳を継続しながら妊娠される方や、中等度の上昇があっても妊娠される方も多いため、その取り扱いについては個々に対応を検討しているのが現状です。下垂体腺腫が見られない多くのケースでは薬物療法で経過を観察することになりますが、この際どこまでプロラクチンを低下させるかの目標値やいつまで服薬を続けるかについては、はっきりとした基準がありません。症状がなければ放置することもありますが一旦は薬物治療を行い、何らかの改善があるかどうかを観察することにしています。しかし服用を止めると再上昇することも多く、また服用していても低下しない方もおられます。このような方では定期的に血液検査を行って、経過観察することにしています。

下垂体腺腫

血中プロラクチン値が100以上の高値を示す場合には、まれにプロラクチン産生下垂体腺腫の可能性があるため頭部CTやMRIで鑑別診断を行うのが一般的です。この下垂体腺腫では視神経がその近傍を走るため圧迫症状による視覚障害が出現することがあります。下垂体腺腫が見つかった場合にはその大きさや症状により手術や薬物療法を検討します。
また妊娠に伴い腫瘍のサイズが増大する可能性があるため注意が必要です。
この場合には内服治療を続けながら妊娠を継続することになります。

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