院長からのメッセージ

不妊治療のあり方に満足されていますか?

体外受精などの高度生殖補助医療(以下ARTと略)全盛のこの時代は、従来子供に恵まれないとされた夫婦に大きな福音をもたらすこととなりました。このような光景を日常的に目にしている我々は、ともすれば「生命を創出した」かのような慢心に陥ることさえあります。生殖医療の技術革新は不妊治療に携わる医療人の意識をも大きく変えてしまう、それほど劇的なものでありました。

ARTのなかった頃、不妊治療といえば暗闇に向かって石を投げるような手応えのない時代を長らく経験してきました。先人達は数少ない手段を駆使して診療にあたり、「授かる」のをひたすら待ち望んだ時代でした。このような無力感にさいなまれた時代を経験しているだけに、ARTのクリアカットな治療成績に我々は自信を回復し、小気味よさを超えて快感すら覚えることがあります。患者さんも満足し医療人の自尊心も満たされる、そんな理想的な医療として全盛を極めているのはご存じの通りです。
そしていまやARTは我々にとって最も安心でき、かつ十分な効果が期待できる治療法となりました。

しかしこれこそが現在の不妊治療がはまり込んでいる大きな落とし穴であることに我々自身は気づいています。“オーバートリートメント”と言われる過度の医療行為をもたらす体質に陥ってしまっているという現状です。私自身にも度々経験のあることですが、度重なる体外受精の後に自然に妊娠したという笑えない話をよく耳にするようになりました。
無敵の“ART神話”を過大広告し、その効果を期待するご夫婦の要望に医療人が安易に応じていることと、不妊治療がコマーシャルベースで行われるようになり、経営が優先されるようになったことがその背景にあるということは否めません。時代の流れとはいえ、望まない方向に向かって大きく舵をとられてしまったような危機感と不安を感じているのは他ならぬ我々医療側の人間なのです。

「納得できる」治療を受けていますか?

初診で来られたご夫婦が我々専門医に尋ねたいことは「自分には何か妊娠できない原因があるのか」、「自分には妊娠する可能性があるのか」、「どのような方法をとれば妊娠できるのか」という3点であると思います。しかしこの基本的な質問は実際の診療では案外ないがしろにされているのではないでしょうか?
これに対し「検査では異常はありません」、「やってみないと分かりません」、「治療は決まった順序で進めます」と決まり文句で答えるだけでは納得できないのは当然でしょう。

説明が十分受けられないからと、あるいはセカンドオピニオンを求めて、たくさんのご夫婦が来院されます。しかしその多くの場合、先方の医師の治療方針に大きな間違いはないことに気づきます。そこにあるのは説明不足による誤解と不信感であります。そのご夫婦にとって足りなかったのは医師の技量ではなく説明にかける時間と言葉なのです。

不妊症も学問である以上、我々が考える事はご夫婦にも理解してもらえるはずの内容であり、またそうでなければなりません。とは言え不妊症は専門性が高いためその説明に苦慮するのも事実です。自分の言葉足らずのせいで理解してもらえないもどかしさを感じることは多々あります。実感をもって理解してもらえるような話し方の工夫や誠意なくしては信頼を得ることはできないのだと痛感いたします。
「納得なくして信頼なし」まずはじっくりと質問してみる。
その対応を見てクリニックを選んでみてはどうでしょうか。

そろそろ見直しが必要です

“アクティブバース”という言葉があります。一言でいえば出産のスタイルを妊婦さん自身の考えで決めるというものです。産科学の進歩により安全なお産が望める時代になったことを受けて、分娩台にしばりつける通り一辺倒なお産を見直し“自分らしく自然なお産”を求める人が増えています。医療不信、医療過誤といわれるこの時代にあって、病院に一方的に押しつけられるスタイルを受け入れるのではなく、自ら積極的に取り組むという高い意識とも言えるでしょう。

出産に“自分らしさ”が追求できるのであれば、出産にいたる前段階である不妊治療についてはどうなのでしょうか。実は“ご夫婦の望む治療”と“ご夫婦に必要と考えられる治療”との間に大きな隔たりがあることが少なくありません。不妊治療のトンネルの長さは歩いてみて初めて分かるものなのです。最初は治療に関して自分のこだわりを抱いていたご夫婦が、その後だんだんと無口になってゆくのが見て取れます。厳しい現実を前にすると“こだわり”は薄れてゆくのだと思います。
これと対照的に最初から「おまかせします」というご夫婦もかなり多いのです。治療を順調に進めるための心遣いとも取れるのですが、本心は「よく分からないので答えられません」ということではないでしょうか。専門性の高い医療であるだけに致し方ないことではありますが、できるだけ関心を抱いて治療に望まれることをお勧めします。治療が行き詰まった場合、どの程度までの治療を受けるかを最終的に判断するのはご夫婦であるからです。そしてさらに大事なこととして、どのような不妊治療を経て妊娠したかは、その後の出産そして育児へも影響するということを知っておいてください。

“授かる”不妊治療を目指して

不妊治療は格段な進歩を遂げたとはいえ、生命の誕生が神秘的で畏敬の念に満ちたことであることに変わりはありません。しかしARTの隆盛によってもたらされた我々のおごりは不妊治療をいつしか“授かる医療”から“授ける医療”へと変えてゆきました。一般不妊治療(人工授精までの治療)を十分に試みることなく安易に先進医療に進むのもその現れと言えるでしょう。このような結果オーライの傾向を我々は恥じなければいけません。
「先進医療だけが不妊治療ではないはず」という先人達の声が聞こえてきそうです。

一方で実際に不妊クリニックの門をくぐるご夫婦の大多数はそのような先進医療を望んでいるのではありません。求められているのは“自然に近いかたちで妊娠する方法”に他ならないのです。求めていた医療と実際に受ける医療の違いにとまどい、治療を途中で断念してゆくご夫婦は多いのです。“いかに自然に近い方法で妊娠できるか”という命題への探求心なくして医学の進歩を豪語するのは片手落ちであると言えるのではないでしょうか。先進医療で培われた技術と知識があるのなら、それを携えて一般不妊治療にフィードバックしてこそ不妊専門クリニックの称号が与えられるのではないかと私は考えます。

不妊治療は専門施設でお受けください

不妊症にも様々な程度があり、すべての人に専門医の技術が必要だとは思いませんが、その上であえて申し上げたいと思います。不妊専門クリニックの存在が広く知られるようになったとは言え、通院が不便であるとか、待ち時間が長いなどの手間や、望まない治療を無理に勧められるのではという不安などから敬遠している方も多いと思います。それ以上に、自分はそこまで重症であるとは通常考えてもみないことでしょう。それにかかりつけで気心の知れた先生の方がなにかと頼りになるのも事実です。
しかし不妊症は“風邪には感冒薬”といったふうに薬を服用していればいずれ解消できるものとは限りません。さらに内科診療でもっともありふれている風邪でさえ、肺炎予防と言って必要のない抗生剤の投与が蔓延している日本の現状をふまえると、不妊治療に対しても我々は同じ心配を抱くのです。

ARTの発展に伴い生殖医療はここ30年で産婦人科領域から完全に独立し、専門医による治療が行われるようになりました。癌の診療は専門医で受けることが一般的となりましたが、不妊治療も同じ観点から病院を選ぶ時代が到来したと言えます。
不妊治療に近道はありませんが、回り道をしていることは往々にしてあります。
あなたが現在、十分な検査も説明もないままに漫然と排卵誘発剤の処方を受けているのであれば我々は憂慮します。専門医はあなたの大切な時間の配分を考えて治療をします。
あなたが現在、妊婦さんと同じ待合室で順番を待っているのであれば我々は困惑します。当院の待合室にはお腹の大きな妊婦さんも、癌検診のご婦人もおられません。どうぞ人目を気にせずに、そしてご夫婦でお越しください。

ソフトとハードに支えられている不妊専門クリニックは、卓越した技術を安定して提供することができます。これは非常に大切なことです。
“風邪”を“肺炎”にこじらせないためにも専門医で早めに診察を受け、安心を得るだけでも十分な価値があるのではないでしょうか。その上であなたの限られた時間の有効な使い方について一緒に考えてみましょう。

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