流産とは

流産の定義

流産とは「妊娠22週未満の妊娠の終結」を言います。
妊娠12週未満の「早期流産」と12週以降22週未満の「後期流産」とに分かれますが、一般に流産といえば「早期流産」を指します。「妊娠22週未満」は胎児の胎外生存が不可能な時期をその設定根拠としており、以前は「24週未満」と定義されていたのですが、新生児医療の進歩により1993年に改正されました。

流産の頻度

流産の頻度は母体の年齢によって決まります。グラフは体外受精を実施した際の流産率を示したものです。40歳を超えると実に半数近くが流産に終わります。
流産の頻度
妊娠を経験したことのある女性の約40%は流産を経験しているという報告もあり、流産は誰にでも起こりえる現象であることを認識してください。

 

流産の分類

流産には関連する様々な言い回しがあるため整理しました。

切迫流産 出血や腹痛などの症状があり、流産する可能性がある状態。
進行流産 子宮頸管の開大と出血が起こり、流産が進行していて止めることができない状態。
出血が多い場合には、流産手術を検討。
完全流産 完全に流れてしまった状態。
出血が止まらない場合には、流産手術を検討。
不全流産 完全には排泄されず、一部が残存している状態。
遺残が多く出血を伴う場合は、流産手術を検討。
稽留流産 胎嚢の発育がない、または胎児の死亡が確認されるが、子宮内にとどまっていて排泄されない状態。
自然排泄を待機するか流産手術を検討。
化学的流産 妊娠反応が出ただけで、子宮内に胎嚢が確認できない状態。
通常、月経となって妊娠は終了する。

流産の診断

流産といえば“腹痛を伴った出血”というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、実際にはそのような症状が見られる前に超音波検査にて診断がつきます。
超音波検査による流産の診断は妊娠週数に応じた発育が見られるかどうかによって判断されます。

正常な発育を示す場合の超音波所見
妊娠4週 子宮内膜が厚くなる
妊娠5週 子宮内に胎嚢が確認される
妊娠6週 胎嚢内に卵黄嚢が確認される
妊娠7週 胎児心拍が確認される

ここで問題となるのは妊娠週数の算出方法です。性交日や超音波検査によって排卵日が正確に分かっている場合を除いて、妊娠週数は最終月経から計算されます。しかしこれは「排卵は月経初日から数えて14日目」という前提に基づいているため、排卵が遅れた場合や月経不順で排卵日が特定できない人ではこの週数の数え方はあてはまりません。
最終月経からは妊娠8週と計算されるが、胎児の大きさからは妊娠7週という場合には流産の可能性と単に排卵が遅れているだけの可能性があります。病院で流産の可能性があると言われ、心配になって受診した別の医院で順調と言われることはあるのです。

切迫流産は流産するのか?
産婦人科では妊娠初期に出血があると簡単に切迫流産と診断され、患者さんは不安になります。これは間違いではないのですが、安易に使い回されている感があります。超音波検査を保険診療で実施する場合には、こうした病名が必要なことも誤解を招く要因です。
しかし実際に流産に至るのは一部です。私は少々出血していてもすぐに切迫流産とは診断しません。胎児の発育に問題がない場合には、正常な妊娠に伴った出血だと説明しています。実際に妊娠初期は胎嚢に比して胎盤が大きく、子宮の出口を覆うことがあります。この場合、胎盤の成長に伴って出血が見られることがあります。
流産の自覚症状は出血ですが、その一方で大量出血していても妊娠継続する場合もあります。逆に稽留流産と診断されても全く出血が見られないことも珍しくありません。実は我々医師も出血の色や量だけで流産するかしないかを判断することはできません。
出血のため切迫流産と診断されても胎児の発育が順調であれば、妊娠継続は期待できます。一方、出血がなくても胎児の発育の遅れが見られる場合には流産してしまう可能性は高くなります。
何度か診察を行い経過観察することで、流産の確定診断はなされるのです。

習慣流産とは

類似した言葉がありますので整理します。
不育症:妊娠は成立するが、流産や早産を繰り返して生児が得られない状態。
反復流産:連続して2回の流産した状態。
習慣流産:連続して3回以上流産した状態。

一般に流産回数が2回までの反復流産は3回以上の習慣流産とは区別して考えられます。仮に流産の確率を5分の1(20%)とすると、2回流産する確率は25分の1(4%)、3回流産する確率は125分の1(0.8%)となります。反復流産は4%という高い確率で起こりうるため異常とは見なされないのです。しかし反復流産の人の中から3回目の流産を経験する人がでてくるため、流産のハイリスク群であることにはかわりません。病気でないと言っても、二度も流産を繰り返すと怖くて次の妊娠を考えることもできないと思われます。
そこで当院では、以下のように取り扱うこととしています。

反復流産:希望があれば不育症の検査を行う。異常がなければ治療は原則として行わない。
習慣流産:不育症の検査を行う。異常もしくは希望があれば、何らかの治療を考える。

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